2021年12月29日水曜日

最後の1枚は渾身のプレキャストゲル:絶対に忘れられない「魂の電気泳動」~博士学位のかかった究極のリバイス実験~

目次 1. 魂の電気泳動の日 2. 研究室という"社会"の中で、「論文を書く」という事 3. 難解な問題を前にした解答者が、この世で最も欲しいもの4. いざ、プレキャストゲルで、最後の勝負! 5. 編集後記 (教訓・謝辞) 魂の電気泳動の日今日は、あの日から1年が経つ。1周年記念。生涯にわたって絶対に忘れることがないであろう「魂の電気泳動の日」。あの日を振り返ってお...

2021年12月24日金曜日

モルヌピラビル の催奇形性・発がん性の報道は大丈夫? 日本での報道・周知が甘いのでは?

目次モルヌピラビルが緊急承認されたという決断を見て僕は驚いています.個人的には催奇形性や発がん性の報道(周知)が甘いと思っています。添付文書によると、妊婦は禁忌になっているので、医療従事者たちはわかっているのでしょう。薬害が繰り返されないことを祈るばかりなのですが、 臨床の場/視点からはどのように受け取られているのか気になっています。無関心だったという意見も含めて率直に教えて欲しい。投稿に至った背景だけ簡単にテキストで。・構造見たらわかりますがモルヌピラビルは核酸アナログ・実際細胞実験では 催奇形性を持つリバビリンやファビピラビル(同じ核酸アナログです)と比較して5-10倍程度の変異原性が報告されています。 >S. Zhou, et al. J. Infect. Dis. 244,...

2021年8月21日土曜日

COVID-19 mRNAワクチンの今後の展望:低コスト/高純度化と、キャリアフリー(脂質性ナノ粒子不使用)、そして自己投与へ

mRNAワクチンの今後の展望今朝電車で以下のニュースを見かけて、そろそろ「mRNAワクチンの今後」について書き留めておこうと思いました。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA201WJ0Q1A820C2000000/正直、ブースター接種(3回目)が効果があるのか?とか、annualな接種でいいのか?とかその辺の臨床的知見までは追いきれていないですので(僕の追うべきは基礎側)一応それはお伝えしておきます。結論ファーストで、今考えている「mRNAワクチンの今後」です。以下①ー④を中心に技術・研究側での議論は進んでいくのではないかと考えています。⑤も重要ですがやや付随的というか、継続的に議論は進むが、優先度はちょっと落ちるかな、という印象(いや繰り返しますが⑤も大事)。 ①高純度②低コスト③キャリアフリー④自己投与が可能⑤その他:保存温度(安定性)、タンパクへの翻訳効率活性化 各論書いていると大変になるので、サクッとですが、概要を記しておきます①高純度ファイザー/Biontech製のワクチンの純度は実は60-70%程度という報告がされています。これが実は衝撃だと思って欲しくて、普通のタンパク製剤(抗体)や低分子の医薬品の純度はまず99.5%くらいあると思います。95%でぎり承認、90%切ればもう議論できないくらいの感覚。というのも例えば純度90%だったとしても、残りの10%の不純物が本当はターゲットと考えている医薬品の100倍活性があるみたいな話だったら実は主要な生理活性を持っているのは、不純物の方だよね、って考えもありうるわけで。60-70%というのは、基礎研究の論文をpublishするのにギリギリ耐えるかどうかくらいの相当汚いレベルです(僕がreviewerなら基礎論文でも純度70%でデータ出してきたとしてもなんでこんなに汚いんだ?精製しなさいって言います。)。巷ではなぜ話題になっていないのかよくわからないですが、多分水面下でこの辺は対策が進められているのでは?と推測しています。②低コスト 以前から基礎の分野では、ここは議論の対象かも。(基礎科学の試薬会社から試算してmRNAワクチン3kg(1億回分)を作ろうと思ったらスケールメリット入れても5-50兆円かかるって、以前予想投稿していました。)。実際今のところ、20億回分で:ファイザーの売り上げが3.7兆円,...

2021年8月9日月曜日

核酸医薬研究者の、新型コロナウイルスワクチン接種手記_気になったのはモデルナアームと黄色尿

新型コロナウイルスワクチン接種記録・先日(というか昨日)ワクチン打ってきたので、個人の体験記録として、後々のためにも残しておこうと思います。あくまで接種に反対とか賛成とか、ワクチン危ないとか大丈夫とかそういう意見を述べるための記事ではなくて、本当に立場としては中立な立場で書こうと思っています。「個人として、このように感じた/ このような経験をした」ということを述べるだけです。n=1の意見としてご参考まで。接種に至るまで (2021年6-8月くらい)・6月くらいに大学の事務から、職域接種(?)の案内が来た・予約開始が7月上旬くらいだった・この職域摂取では、モデルナ(moderna)ワクチンを打つらしい(やった!)・自分は大学の方での実験が繁忙期だったこともあって少々後回しにして7月末(25日くらい?)に再び予約サイトの確認・予約方法のチェックなどをすることに。 →...

2021年7月30日金曜日

健康とは、趣味である?! みんなもうとっくに、そのサプリが効かないことなんて知っている. それでも、健康を追いたい.

健康とは、ブームである?!表題は「趣味」って書いてあるのに「ブーム」かい!ってなるかもなのですがまあその辺はお手やわらかに。「健康とは何か?」の着想で一つぼーっと考えていたのでメモします。(いや前からも以下の考えはあったんですけど整理です。)根拠となる文献や資料はあまりなくて、あくまでも妄想です。連想多めなので注。さて、今回の記事で主張しようと試みるのは以下のスキームだ。「健康とは何か? →  健康とは、ブームである。」(注:筆者の立場はあくまでニュート...

2021年7月16日金曜日

GoogleよりAlphaFold2の論文がNatureに、RoseTTAFold論文がScienceに同時に。

激動のタンパク質計算科学単なる話題提供ですが、タンパク質計算科学と呼ばれる領域が今日すんごいです。(個人的に、第二のジスルフィドの発見, aducanumab承認, GlycoRNAに続いて2021の4大ニュースとしてランクイン)GoogleよりAlphaFold2の論文がNature、RoseTTAFold論文がScienceに同時に出ました。3D protein structure prediction via AI deep learning. つまり、たんぱく質の立体構造をAIで予想する系。この領域では今まで、実験、つまり「X線結晶構造解析」でやっていました。(1953にワトソン、クリック、ロザリンド...

2021年6月8日火曜日

米バイオジェン/エーザイがついに、アデュカヌマブのアルツハイマー病に対するFDA承認を...!!!

目次数十年ぶりのアルツハイマー薬今朝方、このニュースを聞いて震えました。賛否巻き起こるでしょうが、ついに条件付きではありますが、米国バイオジェンとエーザイから申請された、アデュカヌマブのFDA承認がおりました。https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/us-fda-set-rule-controversial-biogen-alzheimers-drug-2021-06-07/数十年来のアルツハイマー薬。一つ、歴史を塗り替えるという意味で、本出来事は大変に大きな意義を持つと思います。また、一部の患者さん・そのご家族もきっと待ちに待った新規医薬品であることは間違いない。暗い世の中に一つ希望の光を持ち込むようなニュースだ。。医薬品だとかヘルスケアの界隈にいると、このような歴史的瞬間に出会えることが数年に一回くらいあるけれど、その度に、僕はこの分野に来てよかったと思う。すごいな医薬品は。と感動する。さて一方、年間600万円という超高額医薬(しかもアルツハイマーなので慢性的に投与続けないといけない)ということで、また薬価の議論もまき起こりそうです。日本だけでも600万人もの認知症患者さんがいると言われているので、この人たちがこれをみんな使い出したら...なんて考えるとえらいことです。また、注意しないといけないのは、これもまた決して「治療薬」とはいうものの完全に治すことのできる薬ではなく、あくまでも「進行を遅らせる」ものに過ぎないということ。バイオジェン・ジャパン初のインターンところで、もう時効?だと思うので、暴露です。(インターンに行っていた事実は暴露して問題ないのですが、内容はあまり明かせられない)2019年に僕は、リーディング大学院関連のプロジェクトで2ヶ月ほど企業インターンに行くことになって、バイオジェン・ジャパン初の学生インターン生として、この薬の承認申請にも末端で関わったことがあります。ちょうど、ENGAGE/EMERGE試験のP3を中止しながら承認申請出すとか出さないとかしてた頃です。https://www.eisai.co.jp/news/2019/news201917.htmlhttps://answers.ten-navi.com/pharmanews/17164/本当に末端業務で、患者さんの治験リクルート計画作成を学んだりした医薬品なので思い入れもあります。グローバルの会社の方々とも相当本腰入れて、1週間近くにわたって議論を続けていたような記憶など、など、一気にあの日々が思い出されました。。。またアデュカヌマブについてこの機会にアップデートしてみようと思います。【追記】*以下、「投与基準」について、どうお考えですか?という意見をいただいたので、参考までに当時お話に登っていた議論を記憶から手繰り寄せてつらつら書いてみます.年間600万円ほどの薬価と言われている中、慢性疾患のAD患者にどう差別化して投与されるのかが気になります。臨床試験の組み入れ基準をみると、ごく一般的なAD患者を組み入れている印象ですが、PET検査でアミロイド陽性患者を対象としています。重症患者を選択しようにも、早期に使用されないと有効性は低下しそうですし、使用基準、難しいなと感じています。*...

2021年4月12日月曜日

遺伝子治療の外観と、mRNAの送達技術とについて

目次 1. 【遺伝子治療の概要】 2. 【mRNA delivery】①【遺伝子治療の概要】・遺伝子治療の80%はウイルスを使ってる現状[virus送達の特徴]・大量にvirus入れると肝障害(virusは肝臓にいきいやすい)...AAV8や9.・AAVは安全だが、同じ細胞がクローナルに増殖(癌化する危険性)・中和抗体による作用減弱(繰り返し投与ができない)・高い(zolgensmaなど)・年単位での発現(関係ないところにも発現)・4.5kbpくらいしか発現できない[plasmid DNA/mRNAによるdelivery]●plasmid DNA delivery- 1990, scienceここでhotになる. (あれ, virus使わなくてもいけんじゃん)* plasmid によるDNA送達の問題 ・細胞分裂しない限り核の中に入らない...

2021年2月8日月曜日

博士3年のポスドク就活事情;JREC-IN使って1カ月であっさり博士研究員オファー3ラボ内定【ポスドク先選択7か条】

* 株式会社アカリクさまからご招待いただき、  本記事は「アカリク アドベントカレンダー2021」に参加しております。======あれだけ不安だった「ポスドク先が見つかるのか問題」は、あっさりと解決された。さきに結果だけ述べておくと、1月5日から始めたポスドク先を見つける活動、たったのジャスト1カ月で終わりました(2月5日)。僕みたいに全く業績出てなくて、こんなに苦しくてもがいてもがいて、結婚して家庭もあるのに明日の飯も食えるかわかんない、みたいな状態でも、決まるときがきたら、あっさりと決まると伝えたい。その時まで、心を無にして目の...

2021年1月27日水曜日

2021年1月26日火曜日

社会関係資本(人のつながり)と、食との関係性の考察:人はみんなで食べないと(共食)生きていけないのか?

二度目の緊急事態宣言を受けて飲食業界はもう大変なことになっているだろうと心中お察しします。しかもなんと、1カ月を軸に延長を検討となると、経営としては本当にしんどいだろうなと。実際、京都の街並みを歩いていても、新京極や祇園といった主要なストリートですら空き店舗、テナント募集中の看板をいくつもみかけます。目も当てられないです。僕個人としては、外出自粛をすべきだということも理解できるし、営業自粛をすると外食産業は直ちに経営が立ち行かなくなるということも理解できる。どうしたらいいのかといわれてすぐには答えは出せない。こちらも記憶に新しいだろう。先週も...

2021年1月20日水曜日

人生初、原著での国際学術論文がイギリスの化学雑誌(ケムコム, Chem. commun.)に受理(アクセプト)→in press!

二度目になりますが年始初っ端、原著での国際学術論文がイギリスの化学雑誌(ケムコム, Chem. commun.)にアクセプトされました (in press)。Online版が公開されたので、早速シェアしますhttps://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2021/CC/D0CC07171D(ただし、無料ではアブストラクトしか見れません.....

2021年1月18日月曜日

ワクチン関連話題:mRNAワクチン、HPVやワクチン忌避(Vaccine Hesitancy)について

ワクチン関連話題:HPVやワクチン忌避(Vaccine Hesitancy)についてワクチン関連について、所々の視点から考察したいと思います。新型コロナウイルスのmRNAワクチンに関連した話題もぼちぼちあがるかもしれま...

薬剤師の歴史と医薬分業の観点から、薬剤師の職業を考える:という勉強会を開いたよ

タイトル通りです.Twitterのいいところは、コメントとかからサクッと勉強会とかが始まっちゃうところですね.今回のも、先輩にちらっとコメントしたところから開催決定したって感じでした.年の瀬にやってたのに今更...

心理学・哲学・社会学・人文学的 思考フレーム集

●メアリーの部屋ー1982. by フランク・ジャクソン(哲学者)ー思考実験 ・メアリーは白黒の部屋で生まれ育って、一歩も外に出たことがない  つまり、メアリーは生まれてこのかた 色というものを一度も見たことがない。 ・一方メアリーは神経生理学についての専門知識があって、視覚に関する物理現象を(テキストの上では)全て知っている。 ・では、彼女が白黒の部屋から解放されて「色のある世界」を目の当たりにした時、  彼女は何か新しいことを学ぶだろうか?ークオリアや物理主義に対する知識論法とも関わる*クオリア(経験の主観的な性質):何かメアリーが新しいことを学ぶなら、そこにはクオリアが存在するということになる。*知識論法:メアリーが新しいことを学ぶとしたら、物理主義は誤りということになる。心的な状...

2021年1月9日土曜日

血の滲む努力の末に...年始早々Accept! 学位申請にポスドク申請に奔走

ついに学位申請を出せました...!!!感無量...年始早々の1月5日(イギリス時間では4日)に、人生初の筆頭原著論文にして、学位論文となる論文が、英文国際化学雑誌に受理(アクセプト)されました。やっっとだ。IF=6くらいで、まあまあの雑誌って感じですが、まあよくこの一年で頑張ったとは思う。3年ある中で2年間はなんのデータもなく、最終学年の5月くらいからやっと進み始めたの...

2021年1月2日土曜日

2021年やりたいことリスト34:抱負と決意と、自戒を込めて.

2021年やりたいことリスト34抱負にかえて、今年も作りました!やりたいことリスト.34個に得に意味はなくて、やりたいことを列挙していったらこうなった感じ.今年も多忙になりそうだ。ある程度成果も形になる前半戦になりそうですが、慢心せず、あくまでも圧倒的な研鑽と下積みの一年でいこうと思います。これは年末ステイし...

2021年1月1日金曜日

2020年の振り返り:やる/やらないリストの達成度合い評価

2020 やる / やらない リストの振り返りついに新年明けてしまいました。おめでとうございます!今年はずーーーーいぶん久しぶりに、伊勢神宮以外の神社で初詣してきてしまいました。ということは、久しぶりに実家ではない場所で年越しをしたということです。お嫁さんと過ごす年越しもなんだか新鮮でした。さて、【2021年やりたいことリスト】を作成/公開する前に、2020年の年始に作成した目標について振り返りたいと思います。総じて、習慣や思考・態度的な面については結構思うようにいったかなぁという印象です。一点だけ、インプットする情報量が減ったというのが気...