●●
AMR臨床リファレンスセンターが今年8月、全国の男女計700人にインターネットを通じて調査した。
抗菌薬が風邪に効くと間違って答えた人は46%に上り、効かないと正しく答えられた人は25%だけだった。正しく答えられた人は年齢が若いほど少なかった。ウイルスや風邪に効果があると誤って答えた人の割合は1年前の調査よりやや増え、理解が進んでいないことが分かった。
抗菌薬は症状がなくなっても処方された分を最後まで飲みきることが耐性菌の発生を防ぐのに大切だとされている。「治ったら早くやめる方がよい」と誤って答えた人は43%に上ったが、正解した人も30%。副作用の項目でも正解率は高く、研究グループは「この2項目は、処方される際に医師や薬剤師から注意事項として説明することで知識が広まっている可能性がある」と指摘した。
一方、薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがある人は37%と19年調査の50%から大きく減った。新型コロナウイルス感染症流行の影響で、関心が薄まっている恐れがあるとしている。
温水便座を介して多剤耐性緑膿菌(MDRP)を伝播させるリスクがあると、東京医科大学病院感染制御部・感染症科准教授の中村造氏が第31回欧州臨床微生物学会議(ECCMID 2021、ウェブ開催7月9~12日)で報告。
中村氏らは、2020年9月~21年1月に同院血液病棟トイレに設置した温水便座のノズルから検体を採取した。このトイレを使用していたのは、重症敗血症2例を含むMDRP感染患者3例。DNAフィンガープリント法を用いてノズルから採取した検体と3例から検出されたMDRP株が同一株かどうかを調べた。
都市の微生物・薬剤耐性遺伝子の世界地図-世界60 都市で収集した約5,000 サンプルのメタゲノム解析-
・世界 60 都市の人工環境(地下鉄の駅など)に存在する微生物や薬剤耐性遺伝子の調査を行う国際共同研究グループに参加し、この分布をもとに世界地図を作製するとともに、都市に固有の微生物群が存在することを報告しました。本成果は 5 月 26 日(米国東部時間)、国際科学誌「Cell」に掲載されました。
・世界規模で都市のマイクロバイオーム(微生物群集とその遺伝子)を調査するため、国際コンソーシアム MetaSUB(※1)が 2015 年に設立されました。
Cell, Danko et al.: “A global metagenomic map of urban microbiomes and antimicrobial resistance”
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(21)00585-7
DOI: 10.1016/j.cell.2021.05.002
*国際コンソーシアム MetaSUB のホームページ http://metasub.org/
*都市の微生物の世界地図 http://metasub.org/map/
・耐性かどうか(耐性遺伝子がどれほど発現しているかどうか)調べるためには、培養を組み合わせることが必要になるみたい
Further research is needed to explore AMR genes fully in the urban environment, especially in medical environments, including cultural studies that directly measure the phenotype of resistance.
21.04.01.
保険診療情報(匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース:NDB)
を利用したサーベイランスも2018年から公開しています。こちらは
販売量サーベイランスよりも公開時期は遅れてしまいますが、
実際に使用した抗菌薬の量がわかるため、販売量サーベイランスよりも値が正確であると考えられます。
AMR臨床リファレンスセンターが行ったネット調査では、かぜやインフルエンザに抗菌薬は効果的ではないと理解している割合はこの4年間で大きくは変わりませんでした(図1)。一方で、薬剤耐性の原因についてわからないと回答した割合は徐々に下がり、抗菌薬の不必要な使用など正しい選択肢肢を選ぶ人が増えていました(図2)。
2020年の全国抗菌薬販売量(10.6 DID)は、2019年(13.28 DID)から20.2%減少し、2013年(14.91 DID)と比較すると28.9%減少となった。
また、抗菌薬全体に占める
Accessの使用割合を見ると、2020年は2019年の20.37%から23.86%に増加した(図2)。Accessとは、世界保健機関(WHO)が2019年に打ち出した、抗菌薬適正使用を目的とした「
AWaRe分類」における分類の1つ。AWaRe分類では、
一般的な感染症の第1選択薬または第2選択薬として推奨される「Access」
、耐性化の懸念があり、限られた疾患や適応のみに使用すべきだと定義される「Watch」、
最後の手段として他の抗菌薬が使用できなくなったときのみに使用される「Reserve」の3つに抗菌薬を分類している。
Accessにはアモキシシリンやセファゾリンナトリウムなどの抗菌薬が含まれており、WHOは抗菌薬全体に占めるAccessの割合が60%以上になることを目標に定めている。
ある物質の取りすぎで皮膚が青くなってしまう……、その物質は「銀」です。代替医療製品として、コロイド状銀に殺菌効果を期待して摂取する人がいらっしゃるようなのですが、取り過ぎると皮膚が青くなってしまうのです。これを銀皮症と呼びます。どれだけ摂取するとこうなってしまうのかなど、詳細なことは検討されておりませんし、検討のしようもありませんが、大量摂取は避けた方がよさそうです。
銀は古来、疾病予防の面で着目されていました。銀のスプーンや銀のおしゃぶりは、かつて子どもの病気を予防すると信じられていたのです。「born with a silver spoon in his mouth」という言葉は、お金持ちであるということではなく、健康であるということを意味していたようです (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK563123/)
注目すべき点は、βラクタム構造の右にある、ヘテロ五員環ないしは六員環構造です。ペニシリン系抗菌薬は五員環、セファロスポリン系は六員環となっています。そしてカルバペネム系抗菌薬と他のβラクタム系抗菌薬との最も大きな違いは、五員環の硫黄が炭素に置き換えられているということです。また、βラクタム構造のNの対角である6位の部分がヒドロキシエチル基になっており、より安定的な構造になっています。
レッドマン症候群: バンコマイシンを投与した時に、バンコマイシンのヒスタミン遊離作用から、アレルギー様の反応が起こり、体が赤くなってしまう様を表したもの
レッドマン症候群の治療は抗ヒスタミン薬の投与をすることになりますが、そもそもこうした事態を予防するために、
1gのバンコマイシンを1時間以上かけて投与することが推奨されています。
vanquish(征服する、打ち破る)から取って、バンコマイシンと命名
バンコマイシンは、この網構造をつなぐ架橋ペプチドの形成を邪魔します(ペプチドグリカン前駆体のD-alanyl-D-alanineに結合)。それにより細胞は架橋が作れなくなって細胞壁が構築できなくなってしまい、崩壊するというわけです。
グラム陽性菌というのは、細胞を取り囲むペプチドグリカン層がグラム染色で用いる紫色のクリスタルバイオレット染色で染まるので、グラム陽性菌と呼ばれているのです。グラム陰性菌は、ペプチドグリカン層は外膜の下に作られ、染まりません。当然、外膜に保護されているのでバンコマイシンも届きません。
21.02.09.
細菌の感染で重症となる病気のひとつは「血流感染」です。血流に細菌が入り込むと、その細菌が全身に回り、多臓器不全を起こして命に関わることがあります。大腸菌などグラム陰性桿菌の仲間は、血流感染するとエンドトキシンというリポ多糖体が放出されることで血管が開き、急激に血圧が低下することがあります。この場合、早急に対処しないと命に関わります。時間との勝負でありながら、大腸菌が薬剤耐性をもっていると、治療が難航してしまいます。しかも、2種類以上の薬剤耐性を持っていることもあり、現場の医師を悩ませることになります。
黄色ブドウ球菌や大腸菌に続いて多く検出されるのはカルバペネム耐性緑膿菌です。
大腸菌と同様に血流感染を起こすと重症化しやすいグラム陰性桿菌の仲間です
●【US】 抗生物質の家畜向け販売量、2年連続増加 養豚で増加 20.12.24.
医学的に重要な抗生物質の家畜向け販売量: 19年は618万9260キログラム(同3%増)
・食品政策を監視する非営利団体U.S.PIRGは声明を発表。「家畜への医学的に重要な抗生物質の乱用は耐性菌問題の主因の一つだ。販売量の83%が養牛・養豚向けで、近年、豚への使用が急増している」と指摘。
ー家畜別では、養牛向けが41%、養豚向けが42%、養鶏向けが3%、七面鳥向けが10%、その他が4%。養豚向けは前年との比較で販売量が増えて9%増。養牛も1%増となった。一方、養鶏向けは13%減、七面鳥も4%減と減少した。
ーまた、最も使われた抗生物質はテトラサイクリンで、4%増の411万7031キログラム。全販売量の67%を占めた。次いでペニシリン(全体の12%)、マクロライド(同8%)、アミノグリコシド(同5%)などと続いた。
ー薬剤耐性菌に詳しいWHO(世界保健機関)のハナン・バルキー博士は『The Sun』の取材に、世界の新型コロナウイルス患者の7割以上が抗生物質の投与を受けていることに、強い懸念を示している。
その投与が真に必要なのは、米国の調査では4%、英国の調査では1%にも満たなかったというのだ。
ー「スーパー淋病の感染者は、2014年と比較して63%も増加した」と説明する米・CDC(疾病予防管理センター)。ヨーロッパのなかでも著しい増加がみられるのはイギリスで、今のペースでいくと毎年42万人以上の新規感染者が現れ、2030年までに最大で計500万人が感染するのではないかと、指摘している。
抗菌薬の販売量は確かに減りました。2013年と比べた全国の抗菌薬販売量は2018年に約10.2%減少しています(1)
では、抗菌薬耐性菌は減ったのでしょうか? 残念ながら確たる報告は見当たりません。感染症死亡はどうでしょうか? 抗菌薬投与を手控えて死亡が増えては元も子もありません。
(1)国立国際医療研究センター AMR臨床リファレンスセンター:全国抗菌薬販売量サーベイランス(2013-2018年).http://amrcrc.ncgm.go.jp/surveillance/index.html
-「耐性菌が原因で治療に難渋した症例」を過去5年間で経験したかどうか聞いたところ、経験のある医師は24.9%だった(保険診療医6319名の回答)
- 調査で「COVID-19の流行前と比べて、かぜ症状を訴える患者に対して細菌感染の確証がないのに抗菌薬を処方する頻度はどう変化したか」と聞いたところ、かぜ症状を診療している医師5410人のうち、「増えた」(10.5%)という回答が「減った」(8.1%)という回答を上回った. (変わらない:81.4%)
減った理由:受診抑制によって風邪症状自体の患者減
増えた理由:診療行為が制限された(例:溶連菌疑い患者の咽頭視診、検査を控える)
COVID-19の流行下では、「感染リスクの比較的小さい血液迅速検査を積極的に行い、白血球数やCRPの値から細菌感染かどうかを判断するようになった
【以下、全文PDFファイル】
https://hgpi.org/wp-content/uploads/AMR_Infectious-Diseases-Act_JPN.pdf
・感染症法において、「薬剤耐性菌(AMR)感染症」を1つの感染症として規定すべきである。
・感染症法施行規則において、AMR感染症にかかる特定感染症予防指針の策定を規定すべきである。
・新型インフルエンザ等特措法においても、AMR感染症をその対象として規定すべきである。
・自治医大、医療経済研究機構らのチームが解析したところ、年間約9000万件の抗菌薬(抗生物質)の処方のうち、
半分以上が通常は抗菌薬が不要な感染症に処方されていることが分かり最近発表されました 。その上、抗菌薬が必要なケースにおいても、薬剤耐性菌が出やすい不必要に抗菌スぺクトル゙が広いものが処方されていることが明らかになっています。
Hashimoto H. et.al, Indications and classes of outpatient antibiotic prescriptions in Japan: A descriptive study using the national database of electronic health insurance claims, 2012–2015” International Journal of Infectious Diseases 91 (2020) 1–8
ーCandida auris、カンジダ・オーリス
院内感染で広がりやすい菌。
シーツ、ベッドの手すり、ドア、医療器具などに長時間生着
2009年に帝京大学が初の報告、これまでに世界で40か国、数千人の感染者
日本型は病原性低いが、致死率30-60%
=====================================
参考文献
1. 感染対策連携共通プラットフォーム「J-SIPHE(ジェイサイフ)」日本における薬剤耐性菌の現状を把握するためのシステムで、全国の医療機関における感染対策への取り組み、抗菌薬の使用状況、主な細菌や薬剤耐性菌の発生状況などを集約し、地域の医療機関で活用していくことを目的としています。
https://j-siphe.ncgm.go.jp
=====================================
参考URL
次のURLを参考にさせていただきました。
・https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/102800632/?P=1&fbclid=IwAR3a7cbE1iu3NiGpNnxKyrIOuo9ff6UhiQvlown54J1eWHiMxDLAiE-cv5k
参照日;2020年12月04日
=====================================
関連書籍