もうかれこれ8年前からいつも注目している東京大学の講座がある。医療産業イノベーションフォーラムとよばれる。一般公開されているもので、学生なら無料で参加できるものである。最近ではmi3が運営を担うようになっている。
京都に引っ越してからこれにはなかなか参加できずであったが、コロナウイルスの影響を受けてオンラインで開催されることになった。これはと思って実験の合間に参加。
今回は「アカデミア創薬」をテーマにした本講の講義メモをそのまま掲載する。
あぁ。本当に早くアイディエーションしないとって思う2時間でした。周りで成果出し始めている人はたくさんいる。
福永 浩司 東北大学大学院薬学研究科薬理学分野 教授
アルツハイマー型認知症
◆T型カルシウムチャネル
ー神経によく発現している。阻害剤は抗てんかん薬
ー抹消では痛みに関連
ー神経幹細胞でたくさん発現 (うつ症状にも関連している)
ーenhancerで海馬での神経新生が促進される(カルモジュリンを介す)
カルモジュリンタイプ2,4キナーゼを活性化
ーカルモジュリンキナーゼ2はもう一つ機能ある
→プロテアソームの活性化(Rpt6のリン酸化):スパイン形成促進、Abの分解
◆安全性試験は1化合物2億かかる(一般論)
◆Lucifer yellowを注入することでSpineの形態を見ることができる
レヴィ小体型認知症
◆レヴィ小体:シヌクレインの凝集体
◆脂肪酸結合タンパク質(FABP): 脳には3種類ある
3:ニューロン発現(ドパミン神経)
5,7:アストロサイトとオリゴデンドロサイトに発現
◆MPTP: ドパミン神経を壊死させてパーキンソン病発症させる薬剤
◆FABP3はシヌクレインモノマーの取り込みに必須
◆シヌクレインとFABP3が酸化ストレスによってオリゴマーを形成して毒性を発揮する
◆シヌクレインは胃腸管から迷走神経を介して脳に伝播する。
10,20年かけて移動する
辻川 和丈 大阪大学大学院薬学研究科細胞生理学分野 教授 附属化合物ライブラリー・スクリーニングセンター長、附属創薬センター 構造展開ユニット長
◆PCA-1: 前立腺がんのマーカー
膵がんでも発現!
◆PCA-1のsiRNAを投与すると腫瘍体積・重量が抑制される
◆PCA-1陽性だとアポトーシスが誘導される(TUNEL染色)
◆AlkB homolog(ALKBH):PCA-1はALKBH3といわれる。1,2も同時に見つかった。
今では9種類のファミリーが知られていて、それぞれ種々の癌における発現が確認
ー酸化的脱メチル化という新しい作用機序
ーm1A, m3Cを基質としてハイドロキシ化され、ホルムアルデヒドが放出され、脱メチル化
ーRNAのメチル化において顕著なのはtRNA。m1A, m3Aのメチル/脱メチルもそう。
ーメチル化の機能
・安定性の寄与
・局在性への寄与
・プールにおける存在比率への寄与
ー脱メチル化するとタンパク質の翻訳効率が変わる
◆ALKBH3阻害薬ががん治療薬として示唆。
◆エピトランスクトミクス:
RNAの後天的修飾によるタンパク質の発現制御の創薬への関連
・細胞外小胞におけるRNA修飾なんかも注目
◆2016, Nature
・がんの細胞株じゃなくて、臨床検体を創薬の評価に使おうという方針(NCI)
-PDC(Patient-derived cell), PDX(Patient-derived xenograft)に置換されるだろう。
これは熊本大の方も以前言っていた。多分もうデファクトスタンダードになるだろう。
萩原 正敏 京都大学大学院医学研究科形態形成機構学教室 教授
アカデミア創薬とは言えど、製薬企業のOBOGをどんどん引き込んでいるのが実態。これは東北・阪大で同じ。
・覚悟がないと創薬なんてできない。相当資金もいるので、公的資金からもスタートするが途中からスタートアップとして資金調達してかないといけない。
製薬会社はP1では買ってくれない。P2aくらいまで行かなきゃダメ。そうなると人に試験しないといけない。
・自ら手を動かす人が次の世代に投資できるようにならないといけない。
シリアルアントレプレナーシップ。向こうのエンジェルは自分でやって成功した人たち。なのに日本では銀行の人とか、話してもわかんないような人たち。
・ニホンでやろうと思うと相当厳しい。いくらでも壁がある。
イグジットができないっていうのが一つ。いまの現状を変える人たちが必要だ。京都大学ならできるかも?例えば萩原先生はバックオフィスを持っている。
技術とかアイデア・仲間が必要。
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参考URL
<PBIについて>
次のURLを参考にさせていただきました。
・http://www.miii.or.jp/index.html
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