2018年3月2日金曜日

医療系で他大学への大学院進学を悩んでいる人へ: 医学・薬学系大学院・研究室を選ぶ際の5つのポイント

充実した大学院生活を送るために、研究室を選ぶ際の、5つのポイント


とある6年制薬学部にいる後輩から相談があったので、少し書いて見たいと思う。彼女は4年制の博士課程に進学するかで悩んでいた。

読者もきっと、「今の研究室のテーマにあまり興味がわかない」「ラボの中での人間関係がよろしくない」「もっと大きな成果を出したい」などの悩みを抱えてこのページに辿り着いているのだと思う。


大学院の進学にあたり研究室を変えるというのは、多少なりとも勇気がいること。
特に博士課程から進路を変更するとなると、3年間や4年間で1から始めるテーマを仕上げねばならず、成果を出すプレッシャーとの闘いも、決意せねばならない。


かくいう筆者も、修士課程からではあるものの、大学院・研究室を変えている。
どのような情報を信用すべきかという点については割と苦労した記憶もある。


以下、大学院の移転を経験した一人として、
大学院・研究室を選ぶ際の5つのポイントを紹介する。


なお、最も想定している読者としては、 医療系(医学・薬学など)の分野で、 特に博士課程から大学院・研究室を変更したいというような人である。修士から研究室を変えようと思っている学生にとっても大いに参考になるようになっていると思う。
















ウェット系かドライ系かでも大きく変わってくると思うけれど、今回はあえて分けずに。なお、このポイントは筆者の独断に基づいたものであります。あくまでも参考程度に。


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目次
①実績:出版している論文の量・質・オーサーシップ
②環境:実際に訪問すること
③科研費の話:その研究室は、お金あるの?
④今しかできない? そこでしかできない?
⑤総じてワクワクするか
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①実績:出版している論文の量・質・オーサーシップ


 どの研究室のホームページにも必ず「実績」として論文や学会発表の成果などを掲載しているページがあるはずです。大方目指す分野が決まったら、まずはその分野で有名な先生がいないかなどを、ググって検索。研究室を見つけたら僕は最初に実績をチェックしていました。

 将来何を志すかにもよるのだけれど、アカデミアに3年以上浸かって博士号を取ろうと思っているのであれば、いい論文を書いておくに越したことがありません。

 できるだけ、IF(インパクトファクター)の高いジャーナルやオルトメトリクススコアの高い論文を、数多く出している研究室を選ぶべきです。 出している論文の「質」と「量」はそのまま、研究室の志と、分野・雰囲気までをも反映します。

 なお、量と質のどちらを取るかという点についてですが、これは完全に分野に依存すると思っています。例えば反応系の有機合成の分野なんかはインパクトが小さくていいから年間7報くらい書いてしまえるようなところもあります。公衆衛生系では2-3年で一報ださせてくれるようなところもわりと多い印象。
 ちなみに筆者がいる研究室は、博士課程にいる間に一報しか出さないけれど、トップジャーナルに出そう、みたいなところです。


②環境: 実際に訪問すること

博士課程からの進学・転大学院を考えている場合、おそらく願書には「志望する研究室の教授の推薦印」が必要で、希望する研究室に一度足を運ばなくてはならない。(郵送とかで済ませてくれるところもあるかもしれませんが。。
 いずれにせよ、希望するラボに訪問することは大事です。
 訪問時に見ておくべき点は次の3点くらい。

・人

 
できるだけ訪問時にいろんな人と話すように。
先生はもちろんのこと、学生・ポスドク・留学生・バイトの人・秘書さんなどとも話す。
訪問のアポイントを取るときに、同時にそういう時間を設けてもらえないか相談するのもいいかもしれない。

訪問後に、「この人たちと一緒に仕事したい」と思えるかどうかは、研究室を決めるにあたって、とても重要なファクター。 仮にその場に博士進学するとして、3年とかそれ以上って、けっこう長い時間一緒にいることになる。

訪問時間は限られているだろうけど、メンバーがどういう志を抱えて普段研究に臨んでいるのか、可能な限り見ておこう。

・モノ

例えば次のような質問を胸に、研究室を見せてもらおう。

- メンバーとなった際に、自分のデスクは支給されそう?
- あるとしたら、どのくらいのスペースが確保されている?
- 共同で使っている機器はどのくらい、いいものが揃っていそう?

ちなみに筆者のラボは、プライベートデスク・PC1台・プラッテ1台・ドラフト・冷蔵庫1台は個人持ちです。キャンパス2つ使っているのですが、それぞれのキャンパスで一つずつ机とPCがあります。施設面ではとても充実してます。

リソースについてあまり意識しない人もいるかもしれませんが、
筆者が他人から話を聞いている限り、デスクが支給されないとか、
二人で共同でデスクを使っているなんてことも少なくないです(特に関東圏)。
仕事効率化などにおいて、リソース面で苦労しないところを選べるのであればそれに越したことはありません。



・キャンパスの周りの環境


れは特に遠方の研究室へ変更を考えている人向けのアドバイス。
「住まい」とか、研究室・大学院まわりの環境も意外と大事です。
例えば次のような問いは持っておいて損はないと思います。

- 住むとしたらどの辺がいいだろう?
- 家賃は高い?安い? (地方→東京とか、結構苦しいと思います)
- 近くに遊べるところある? (そこに四年通って、ラボ畜にならない?みたいな)
- スーパー、銀行、市役所、郵便局はどこにある?

留学する場合とかも同じですよね。



③科研費の話:その研究室は、お金あるの?


これまたリソースの話。
ただ、その研究室がどのくらい潤沢にお金をとっているかっていうのは研究を進めるうえで極めて重要なファクターです。特にウェットでやる場合。

僕はこれまでお金が潤沢にあるある研究室選んできました。
「高いからあれがない」とかで実験にストップをかけたり、変に悩みたくない。
お金払ってできるだけ実験やコミュニケーションのコストを下げて、成果に対してコミットできた方がいいに決まってます。

「潤沢」の基準はどういう分野のラボに行くかで大きく変わってきます...

あと、知らないひとのために。
科研費は、どの先生がいくら稼いでいるか全て公開されているので、行きたい研究室の教授の名前で調べれば秒でそのラボがお金持ちかそうでないかわかります。
 https://research-er.jp/ranking/researcher/budget
日本全体の研究者のトップとかはこの辺からまず概観できると思います。

さすがだなぁって人、おお、やはりこの人みたいな先生が結構いると思います。

やはりiPSの山中先生はダントツですね〜


④今しかできない? そこでしかできない?


これは、スキルとかテーマ、内容とかの話。
行こうとしているその分野って、そもそも世の中のトレンドとしていい感じなのかとか、博士にいる間にしかできないのかとか。その研究室しか持ってない価値って何?とか。(ユニークな化合物ライブラリを持っていたり、独特の実験手法を確立していたり。)

あと、その研究室でしか学べないスキルは何かとか、そういうまで重視した方がいい。
これは他の人生においても同じことがいえるかもなぁ。

⑤総じてワクワクするか


最後のアドバイスは、2つとか3つまで研究室を絞ったけど、そのうち、どこにいくかで迷った!みたいな状況があった時のために。

なんだかんだで、最後に決め手となるのは、
目を瞑って、自分の心の鐘を聞いて、ワクワクするなって思う方を選ぶ。
直感でいい。
何となく自分の中では実は答えが決まっている気がするのです。

以上5点、少しでも誰かのためになれば嬉しいです。

そのほか、生活費・奨学金のこととかそういうので悩まれている方もいるかと思います。
個人的なご質問・ご相談がございましたらお気軽に、
Contact からご連絡を。



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