2021年8月21日土曜日

COVID-19 mRNAワクチンの今後の展望:低コスト/高純度化と、キャリアフリー(脂質性ナノ粒子不使用)、そして自己投与へ

mRNAワクチンの今後の展望


今朝電車で以下のニュースを見かけて、そろそろ「mRNAワクチンの今後」について書き留めておこうと思いました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA201WJ0Q1A820C2000000/

正直、ブースター接種(3回目)が効果があるのか?とか、annualな接種でいいのか?とかその辺の臨床的知見までは追いきれていないですので(僕の追うべきは基礎側)一応それはお伝えしておきます。



結論ファーストで、今考えている「mRNAワクチンの今後」です。
以下①ー④を中心に技術・研究側での議論は進んでいくのではないかと考えています。⑤も重要ですがやや付随的というか、継続的に議論は進むが、優先度はちょっと落ちるかな、という印象(いや繰り返しますが⑤も大事)。

①高純度
②低コスト
③キャリアフリー
④自己投与が可能
⑤その他:保存温度(安定性)、タンパクへの翻訳効率活性化


各論書いていると大変になるので、サクッとですが、概要を記しておきます

①高純度


ファイザー/Biontech製のワクチンの純度は実は60-70%程度という報告がされています。これが実は衝撃だと思って欲しくて、普通のタンパク製剤(抗体)や低分子の医薬品の純度はまず99.5%くらいあると思います。95%でぎり承認、90%切ればもう議論できないくらいの感覚。というのも例えば純度90%だったとしても、残りの10%の不純物が本当はターゲットと考えている医薬品の100倍活性があるみたいな話だったら実は主要な生理活性を持っているのは、不純物の方だよね、って考えもありうるわけで。

60-70%というのは、基礎研究の論文をpublishするのにギリギリ耐えるかどうかくらいの相当汚いレベルです(僕がreviewerなら基礎論文でも純度70%でデータ出してきたとしてもなんでこんなに汚いんだ?精製しなさいって言います。)。
巷ではなぜ話題になっていないのかよくわからないですが、多分水面下でこの辺は対策が進められているのでは?と推測しています。


②低コスト 


以前から基礎の分野では、ここは議論の対象かも。(基礎科学の試薬会社から試算してmRNAワクチン3kg(1億回分)を作ろうと思ったらスケールメリット入れても5-50兆円かかるって、以前予想投稿していました。)。

実際今のところ、20億回分で:ファイザーの売り上げが3.7兆円, ビオンテックの売り上げが2兆円。思ったより安いけれど、それでも異常なまでの価格です。

(注)毎年世界でめちゃくちゃ売れるtop10の医薬品でもだいたい1000億くらいです。その10-100倍売っている。。。

多分、修飾UridineやARCAの特許、4000塩基のchemical ligationでlossするなどの原因があるのだと考えていますがその辺の奥まったところはまたいつか。


③キャリアフリー


ここはコストや副作用の話と関連。

多分筋中で痛いだけじゃなくて、脂質性ナノ粒子(LNP)による毒性・免疫性もあって、副反応による発熱や腫れがある可能性も否定できないと考えています(インフルエンザワクチンの筋中(LNPを用いていない)は多分こんなに腫れたりしないですよね、データ見てないですけど)。

LNPは粒子の大きさが不均一であったり、+チャージを帯びていて細胞毒性があるって話はずっと指摘されているのです。じゃあどうやってmRNAを送達するの?というところがこれからの研究者の腕の見せ所ですが、昨日もmRNA送達に関して個人的にはBreakthrough of the Yearクラスの面白論文が出ました。日進月歩です。
(ちなみにここが今やってる僕の研究でもあります。)


④自己投与が可能


個人的にここの注目度はtopです。毎年打たないといけないような代物なら、そのうち自己投与が可能になる(ように世の中が動いていく)のではないかと考えています。インスリンの自己注射みたいなイメージです。もちろんそのためには保存温度だの安全性だの、副作用だの免疫反応(多分これが最大の関門)だの課題は山積していることは事実です。

しかし、現状ワクチン購入のコストよりも、稼働する医療資源(特にマンパワーのことを指します)や、それにかかる人件費、などのコストがとてつもなく大きいと踏んでいます。



=====================================
関連書籍

2021年8月9日月曜日

核酸医薬研究者の、新型コロナウイルスワクチン接種手記_気になったのはモデルナアームと黄色尿

新型コロナウイルスワクチン接種記録


・先日(というか昨日)ワクチン打ってきたので、個人の体験記録として、後々のためにも残しておこうと思います。あくまで接種に反対とか賛成とか、ワクチン危ないとか大丈夫とかそういう意見を述べるための記事ではなくて、本当に立場としては中立な立場で書こうと思っています。「個人として、このように感じた/ このような経験をした」ということを述べるだけです。n=1の意見としてご参考まで。



接種に至るまで (2021年6-8月くらい)


・6月くらいに大学の事務から、職域接種(?)の案内が来た
・予約開始が7月上旬くらいだった
・この職域摂取では、モデルナ(moderna)ワクチンを打つらしい(やった!)

・自分は大学の方での実験が繁忙期だったこともあって少々後回しにして7月末(25日くらい?)に再び予約サイトの確認・予約方法のチェックなどをすることに。

 → するとどうでしょう。
  ワクチン供給の遅れからか、予約を一旦中止されていました。。無念、。

・と思いきや、追加で予約を受け付けしますとのメールが2,3日後にすぐ届いて、これは早く予約せねばと受診後すぐにURLを開いて、あっさり1clickで予約完了!(「これで予約終わり?!」ってくらい1クリック。。)
 
 → 8月5日と割とすぐに順番が回ってきました。


ワクチン接種1回目(21年8月5日)


・接種当日:17時37分の接種予約でしたが、結局打ったのは、17時56分。
自治体から届けられるワクチン接種チケットみたいなのを持っていかないといけなかったみたいだけれど、届いたのが前日だったこともあり、開封前で持って行くのさえ失念。

けれども、接種現場で問診票に記入して本人確認書類提出したらあっさり打たせてくれました(予約名簿の確認はされました)。時刻が夕方だったからか、問診まではほぼ待ち時間ゼロで通れて、接種に2,3名の並びがあって5minくらい待ったかな、という感じ。

半個室みたいなところで、自分は看護師さんに打ってもらいました。
接種の際は、利き手の確認とアルコールかぶれ、これまで採血などで倒れたことがないかを確認されたのちに、1秒くらい一瞬で注射。これで完了。

針の痛さはほぼ皆無でした。
一方、打った直後くらいからうっすらジンジンする筋肉の痛さ、これが2日くらいずっと続くのでした。なるほど、これが筋注か。「今夜は少し多めに水分を摂ってくださいね」と一言いただいて退室。

接種後はシールみたいなのを貼ってもらって、
それから15分広場の椅子に座ってアナフィラキシーチェック。
会場出る前にもう一枚、modernaワクチンの注意事項のペライチをいただいて帰宅(ラボに。)。


その日はなんとなぁく腕が痛いかなぁくらいで1日が終わりました。
確かに夜寝る前くらいはやや腕の挙上がしんどくなってきたかも、寝ている時、寝返りとかはなかなか打てなかったですね。


1日後:話に聞いていた通りですが、一番辛かったのはこの日。辛いと言っても、腕の挙上が
困難だというくらいですが。それでも、「筋肉痛のもう少ししんどいバージョン」くらいのものでしたが。何が一番辛かったって、Tシャツの着脱でしょうか。この日も寝返りを打つにはしんどいかなぁくらい痛い。

それでも、だからと言って日常生活に致命的な何かがあったかといえばそうでもない。

その他の症状として、うっすら感じたのは、微熱と倦怠感かな。これもおおよそP3試験の結果通りの副反応ですが。。
①体の火照り:なんとなく熱いなぁポカポカするなぁって感じが1日続きました。1日目の夜に熱を測ったら37.3度、確かに微熱だった!まあ免疫反応起こしてたり正常に炎症起こしているのならよしと。仕事できないほどしんどいとかもなく、本当に気持ち熱いかな、くらい。

②薄い倦怠感:いつもの仕事効率を100とすると、85くらいには落ちるかも?という程度のだるさ。でも熱さの割にだるさは大きくないし、不思議な感覚でした。

③尿の黄ばみ:これが僕特有かも。まあ免疫反応を起こしてうすら風邪ひいていたと考えれば妥当かもですが、尿はこの日黄色いことが多かった気がする。そしていつもより2回分くらいは頻尿だった気がする。水を多めに摂取することを意識したからか。


2日後:この日になると、副反応はほとんど気にならない。腕だけわずかにまだ痛いですが、全然もう平気。逆にモデルナアーム(腕の腫れ)が引くのかどうかが心配になるくらい。注射した位置から3-5cm程度下部に、ぽっこりと腕の膨らみが出てきててこれが気になった。


3日後:もうほとんど腕の痛みは無いも同然。そりゃどっかにぶつけたりしたら痛いでしょうけれど。。ってくらい。一方、腕の腫れはほんの少し(腕まくりをしていたら)まだ確認できる。

4日後:つまりだいたい100時間後ということですが、8月9日にはモデルナアームというべき腕の腫れもほぼ完全に引いて、痛みもなし。

ワクチン接種2回目 (9月日)

摂取日あたりにまた書きます。to be continued


=====================================
参考文献
1.
=====================================
参考URL
<●●について>
次のURLを参考にさせていただきました。

=====================================
関連書籍

2021年7月30日金曜日

健康とは、趣味である?! みんなもうとっくに、そのサプリが効かないことなんて知っている. それでも、健康を追いたい.

健康とは、ブームである?!


表題は「趣味」って書いてあるのに「ブーム」かい!ってなるかもなのですがまあその辺はお手やわらかに。「健康とは何か?」の着想で一つぼーっと考えていたのでメモします。
(いや前からも以下の考えはあったんですけど整理です。)
根拠となる文献や資料はあまりなくて、あくまでも妄想です。連想多めなので注。

さて、今回の記事で主張しようと試みるのは以下のスキームだ。
「健康とは何か? →  健康とは、ブームである。」
(注:筆者の立場はあくまでニュートラル)


2021年7月16日金曜日

GoogleよりAlphaFold2の論文がNatureに、RoseTTAFold論文がScienceに同時に。

激動のタンパク質計算科学

単なる話題提供ですが、タンパク質計算科学と呼ばれる領域が今日すんごいです。

(個人的に、第二のジスルフィドの発見, aducanumab承認, GlycoRNAに続いて2021の4大ニュースとしてランクイン)

GoogleよりAlphaFold2の論文がNature、RoseTTAFold論文がScienceに同時に出ました。


3D protein structure prediction via AI deep learning. つまり、たんぱく質の立体構造をAIで予想する系。この領域では今まで、実験、つまり「X線結晶構造解析」でやっていました。
(1953にワトソン、クリック、ロザリンド フランクリンがDNAの二重螺旋を発見した方法. いや僕そんな詳しくは知らないんですけど。)


従来の計算科学領域では、「やっぱ、計算では実験には敵わないよね」くらいのAIの予想精度だったのですが、Google がalphaFold出してきて、「うあやばい!計算が実験を超える日が来るかも?!!」みたいになってきたのがここ数年くらいで、去年の10月(論文未発表)に、AlphaFold2のデータが世に出てきて、「ヤベェ計算と実験がもう同じレベルじゃん。。。」ってなってました。

今回の論文は、その時のやつです。



もはや、実験で得られた構造とAI予測構造がほぼ同じやん!ってなってて、実際ズレも1オングストローム以下(水素原子1個分以下)くらいになってきています。きもすぎる。昔僕が産総研にいた時に、たんぱく質構造の予測でHomology Modellingって手法で同じことをやってたことがあるのですが、もはやこれがもうゲームというか幼稚園児のおもちゃみたいに思えてきます(多分実際におもちゃ)。




実際に当時から仲のいい産総研時代の研究員の方々に聞くと、Natureとかに出てくるディープラーニング創薬系の論文はもう日本では太刀打ちできないみたいな話でした。「この論文おもろくないっすか!」って言って見せに行くと、「ヤベェなこれ!!!え、もうコードも公開されてるんですか?!どれどれ。EEEええええ?!すごい。すごいです●●さん!!!ええ、もうこんなところまで行ってるんですか?向こうF1でこっち三輪車みたいな戦いですよ」って感じに言われたのをすごい鮮明に覚えてます。


しかしまあ、X線結晶構造解析は手のかかる方法で、タンパク質によっては結晶を作るのに2,3年とかかかったり、中には結晶を取れないタンパクもあります。結晶を取れたとしても、その解像度が低くて議論にならないとかいうこともままあります(それで苦しんでいる仲間を何人も知っています)。今でも結晶構造解析のデータを含む論文が出たら、1ランク上のjournalにいけるって感じがありますし、タンパクによってはNat, Cell, Scienceの姉妹紙クラスには乗るような世界です(先日京都大の同期が実際にSci Advに出してた。これで学位出すらしい。いいな。。)。


はい、単なる話題提供でした。
=====================================
参考文献
1.
=====================================

参考URL

https://science.sciencemag.org/content/early/2021/07/14/science.abj8754
https://www.nature.com/articles/s41586-021-03819-2
https://twitter.com/erictopol/status/1415732633305190405?s=21

Eric Topol のTweetが初期は参考になった:
https://twitter.com/erictopol/status/1415732633305190405?s=21 


=====================================

関連書籍


タンパク質計算科学 ―基礎と創薬への応用


2021年6月8日火曜日

米バイオジェン/エーザイがついに、アデュカヌマブのアルツハイマー病に対するFDA承認を...!!!

目次数十年ぶりのアルツハイマー薬


今朝方、このニュースを聞いて震えました。

賛否巻き起こるでしょうが、ついに条件付きではありますが、
米国バイオジェンとエーザイから申請された、アデュカヌマブのFDA承認がおりました。
https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/us-fda-set-rule-controversial-biogen-alzheimers-drug-2021-06-07/

数十年来のアルツハイマー薬。
一つ、歴史を塗り替えるという意味で、本出来事は大変に大きな意義を持つと思います。
また、一部の患者さん・そのご家族もきっと待ちに待った新規医薬品であることは間違いない。暗い世の中に一つ希望の光を持ち込むようなニュースだ。。

医薬品だとかヘルスケアの界隈にいると、このような歴史的瞬間に出会えることが数年に一回くらいあるけれど、その度に、僕はこの分野に来てよかったと思う。
すごいな医薬品は。と感動する。


さて一方、年間600万円という超高額医薬(しかもアルツハイマーなので慢性的に投与続けないといけない)ということで、また薬価の議論もまき起こりそうです。
日本だけでも600万人もの認知症患者さんがいると言われているので、この人たちがこれをみんな使い出したら...なんて考えるとえらいことです。

また、注意しないといけないのは、これもまた決して「治療薬」とはいうものの完全に治すことのできる薬ではなく、あくまでも「進行を遅らせる」ものに過ぎないということ。


バイオジェン・ジャパン初のインターン


ところで、もう時効?だと思うので、暴露です。
(インターンに行っていた事実は暴露して問題ないのですが、内容はあまり明かせられない)

2019年に僕は、リーディング大学院関連のプロジェクトで2ヶ月ほど企業インターンに行くことになって、バイオジェン・ジャパン初の学生インターン生として、この薬の承認申請にも末端で関わったことがあります。

ちょうど、ENGAGE/EMERGE試験のP3を中止しながら承認申請出すとか出さないとかしてた頃です。
https://www.eisai.co.jp/news/2019/news201917.html
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17164/

本当に末端業務で、患者さんの治験リクルート計画作成を学んだりした医薬品なので思い入れもあります。グローバルの会社の方々とも相当本腰入れて、1週間近くにわたって議論を続けていたような記憶など、など、一気にあの日々が思い出されました。。。

またアデュカヌマブについてこの機会にアップデートしてみようと思います。


【追記】


*以下、「投与基準」について、どうお考えですか?という意見をいただいたので、参考までに当時お話に登っていた議論を記憶から手繰り寄せてつらつら書いてみます.
年間600万円ほどの薬価と言われている中、慢性疾患のAD患者にどう差別化して投与されるのかが気になります。臨床試験の組み入れ基準をみると、ごく一般的なAD患者を組み入れている印象ですが、PET検査でアミロイド陽性患者を対象としています。
重症患者を選択しようにも、早期に使用されないと有効性は低下しそうですし、
使用基準、難しいなと感じています。
* 2,3年前のインターン時の記憶を遡りながらなので間違っていることも多いかもしれません.

* 守秘義務を追ってますが, 以下は記憶からの引用なので、opinions are my own. というか、当該会社の意見ではないともここで断りを入れておきます.


薬価・患者さんの人数・疾患が慢性であること・医薬品の性質等々を考えると、投与基準は本当に難しいし、当時の社内/外でもいろんな意見が巻き起こっていました。

何しろPETだけで50万くらいかかります確か…….
使用基準についてはこの先10年とかそう言ったスパンで検討・議論されていくのではないでしょうか。

(その辺の提言を上手いける専門家集団を作りたいとも考えている。しっかり調査・議論してまとめて見るみたいなのはとても有意義だし、発信できる成果もあげられる。)


さてまず、製薬会社の利益としては患者さんを一人でも多くしたいって意図がゼロではない(というか結構ある)、と思うのでその辺を差し引いて考えてもらえれば。

・グローバルの人らと議論していて感じた「すげぇなこいつら」ってところは、【この医薬品の承認】を単なる承認として捉えず、「社会のnormを変えるきっかけ」にしようとしていたところです。

診断でのアミロイドPETの価値を問う際に用いられていたのは、「Shifting Left」と「Decouple」というキーワードでした。

「Shifting Left」:診断の時期を左、つまり早期にずらそうよ、というコンセプト. 早く診断できることで備えができることの意義がある.
「Decouple」:診断の価値と、治療の価値はそもそも別で、診断することそのものに価値があると見出すべきだ.


僕自身は正直以下どちらも難しいな/よくその価値がわからない(わからないというのは、否定的な意味じゃなくて、neutralな立場からしてわからない)という印象で、「早く診断できることの意義」がどのくらいあるのか?っていうのがいまいちピンと来ていません。(多分、動けなかった手足が動くようになる、みたいな簡単なアウトプットが想像できないからだと思いますが。)日本国内の社員さんたちも、ここは結構biogen グローバルのメンバーと揉めていたというか、議論していた印象です。

ただ、DMT(疾患修飾薬)の威力というか、いかにそれがQOLを上げるのかというアウトカムは、やはり他の疾患(例えば多発性硬化症なんか)を見ていてもやぱ「遅らせるだけ」かもしれないけど、めちゃくちゃそれが患者さんの支えになっているという事実もありますので、一部の患者さんからすれば、これが希望の光(本当の本当に希望で待ちに待っていたみたいな人も絶対にいる)のはずです。

あとはいくらでQoLあげますか?お金持ちしか助からない世の中でいいんです?みたいな他の薬でもあるような話が残ってきます。。


そのほか、、
・我が国におけるPET画像読影者、リガンド製造施設、そして診断の保険償還といったインフラ・システムは十分とは言えないので、その辺も考えないといけないよなぁと考えていました。PET施設はまだ多い方なので、グローバルの人は日本をいい市場だと捉えてるって言ってましたが。。

・そもそもなんでアミロイドPETで見分けたりしないといけないのかということも個人としては気になっていてBiogenさんにはインターン中に他の手段も提言しました(もちろん、知ってて検討しているとのことでしたが)。血液からアミロイドdepositionをdetectするような手法も確立され始めています(以下論文は島津から)。個人的にはこういうような技術の民主化がもう少し進んでくると、気軽な診断ってところに落ち着けるんでしょうなぁと期待しています。

Nature, A. Nakamura, N. Kaneko et. al., 
High performance plasma amyloid-β biomarkers for Alzheimer’s disease. doi:10.1038/nature25456
https://www.nature.com/articles/nature25456.pdf

【追記2】210615

そのほかのニュースだとか疑問点も出てきたので、さらに追記です
●重要な疑問点;静注の点滴で、どうして一部が脳に入るのか

[その他ニュース]
●06.08. 毎日新聞記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/df83a81c9db3bca59451e205871646ae3eaf8597

 日本では昨年12月、厚生労働省に薬事承認を申請した。超高齢社会を迎えて新薬への期待は膨らむとみられるが、FDAの審査でも有効性を巡って否定的な見解も出ていたとされる。また、バイオ医薬品であり、研究開発期間が長いことから高額薬となるとみられる。承認されたとしても、公的医療保険の適用対象とするかや、その場合の対象者も議論となりそうだ。


●06.08. 時事.com:
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021060800222&g=int
 アルツハイマー病に詳しい東京大大学院医学系研究科の岩坪威教授(神経病理学)は「臨床試験(治験)では、投与された患者の症状の進行速度が、投与しないグループと比べて22%遅くなることが示された。早期アルツハイマー病の進行を遅らせることが期待される」と話している。

● 06.08. Nature 
Landmark Alzheimer’s drug approval confounds research community 

―米国食品医薬品局(FDA)が18年ぶりにアルツハイマー病の新薬を承認
―神経学者や生物統計学者からなる独立した委員会を含む多くの専門家が、FDAに対して、臨床試験データはaducanumabが認知機能の低下を遅らせることを決定的に証明するものではないと助言しました:
→ FDAは代替として活動の代替指標(Aβ)を測定して承認の頼りにしたが、これは危険な前例となると一部研究者は警告しています。

―Aducanumabは、アルツハイマー病の根本原因と考えられている脳内のアミロイドβと呼ばれるタンパク質の塊を除去します。FDAは、脳内のアミロイドβを減少させることができるという理由で、この薬を承認しました。

―しかし、一部の患者団体は、不治の病である進行性の病気の影響を和らげることができるものなら何でも欲しいと思っています。世界中で3,500万人がこのタイプの認知症を患っていると言われています。
:「新しいカテゴリーの最初の薬が承認されると、その分野が活性化され、新しい治療法への投資が増え、より大きなイノベーションが促されることは、歴史が証明しています」(Maria Carrillo, chief science officer for the patient advocacy group Alzheimer’s Association in Chicago, Illinois)

―アミロイド仮説に懐疑的なジョージ・ペリーは、「研究界を10〜20年後退させることになるでしょう」と言う。

【Problematic Data Set】
―2019年3月、研究者たちは、早期のアルツハイマー病患者を対象に実施されたこれらの試験が進行中の中間データを覗き見た。彼らは、これらが成功する可能性は低いと結論づけ、バイオジェン社は両試験を早期に中止した。

―バイオジェン社の再分析によると、最高用量のアデュカヌマブを投与された患者の一部で、認知機能の低下が統計的に有意な方法で抑制されたという。今回の試験では、低用量では同じ効果が得られず、もう一つの試験では、どの用量でも効果が得られませんでした。

―また、今回のデータでは、アデュカヌマブにも無視できない副作用があることが示されました。2つの第3相試験では、治療を受けた患者の約40%に脳の腫れが見られました。これらの患者さんのほとんどは、腫れに関連した症状に悩まされることはありませんが、危険な合併症を避けるために定期的な脳内スキャンが必要であり、患者さん、神経科医、医療システムにとって負担となっています。

―11月の会議では、最終的に11人のパネリストのうち10人が、提示されたデータはアデュカヌマブの有効性を示す証拠とは見なされないと投票し、残りの1人は棄権しました。今週、FDAは反対の結論を出しました。

―バイオジェン社は、Post-approval trial試験を完了するために最大9年間の猶予を与えられています。
―これは、製薬会社が、極めて質の低いエビデンスや事後的なデータ収集に基づいて医薬品を市場に投入する手段として、迅速承認プログラムを利用しようとする道を開くものです(Kesselheim)

―規制当局は用途を限定せず、すべてのアルツハイマー病患者に投与することができるとしている。バイオジェン社によれば、一人当たり年間約56,000米ドルの薬剤費を請求するとのことです。米国の600万人のアルツハイマー病患者の5%がこの治療を受ければ、この薬の収益は年間170億ドル近くに達する。これにより、現在の収益では、2番目に売れている薬剤となります。

―非営利団体であるInstitute for Clinical and Economic Reviewは、費用対効果の高い価格を年間2,560〜8,300ドルと見積もっています。

====================================
参考文献
1.
=====================================

参考URL

<本ニュースについて>
次のURLを参考にさせていただきました。
・https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/us-fda-set-rule-controversial-biogen-alzheimers-drug-2021-06-07/

・という本記事を書いていたらあっという間に国内でもニュースが...
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=71253
https://www.asahi.com/articles/ASP680NV8P64ULZU007.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/df83a81c9db3bca59451e205871646ae3eaf8597
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021060800030&g=int

・アミロイド PET イメージング剤の適正使用ガイドライン(日本核医学会)
http://jsnm.org/wp_jsnm/wp-content/themes/theme_jsnm/doc/amyloid_pet_imaging_gl_2.pdf

・aducanumabについてのエビデンスレポート
https://icer.org/wp-content/uploads/2020/10/ICER_ALZ_Draft_Evidence_Report_050521.pdf

=====================================
関連書籍