2020年1月23日木曜日

海外ポスドクに挑戦しようと思った理由を言語化してみる

人生における重要な選択の理由を言語化すること


真夏のインターンでこのことを学んだ。
とある選択をするときに、自分がどういう価値基準をもったうえで判断をするのか?

これを言語化しておくことは今後自分が迷ったときとか役に立つし、
間違った選択をしてしまいそうなときに、そうせずに済むことがある。


ここ二年間くらいずっと、
いわゆる研究者の道で勝負するのか、スタートアップでバリバリ経営企画・新規事業で就職のかっていう2択で悩み続けてきた。

ようやく年始に決意できたので、その理由とかを自分なりに言語化しておこうと思う。




研究者 vs 新規事業 で悩んでいた理由


一見すると全く別の二者。
ところが、仕事に対するモチベーションの根源を覗いてみると、これらが結構近いのだとわかる。

つまり筆者は、クリエイティビティの高い仕事をしたい。
自分で、ゼロから新しい概念・システム・技術・サービスを創り上げ、世の中に大きな影響を与えたい


ゼロイチをしたいという意味では国内スタートアップでの新規事業や経営企画でもできるし、研究者として新しい技術基盤、システム、概念などを創造することでもできる。


おそらくどっちを選んでも自分はわりと楽しんで仕事ができるなと今でも思う。スタートアップなら、いわゆる幸せな家庭を気づいてそこそこ給料もらいながら子育てしながら、、、みたいなイメージがつくし、研究者でも、ぜいたくはできないものの、いそいそ自分が研究して、やりたいことはできる。


あとは自分がどういう野心や野望をもっているかっていうそういうラインで判断することになるのかなって思って判断した。


海外ポスドクに挑戦しようと思った理由


これから書いていくように、かなり複雑かつ多様な要素が絡み合った結果、僕はかすかに心の鐘が動いたポスドクの方を選択した。


ずーっと言語化してみようと思ってみてたんだけど、ようやくなんとなくではあるが、一言で表題の理由を表せれるようになってきた。現時点での回答はこうだ。


より精神的・知的に満たされた状態で永遠に努力を続けられるだろうというイメージがついたから。
研究なら、絶対にひよらない自信がある。

これを、噛み砕いてみる。

まずわかりやすいように、
僕の幸福な状態(ありたい姿、理想の自分)を
To Do, To Beの二軸に(無理やり)分けてみる


軸1. To Do


これは上の「研究者 vs 新規事業 で悩んでいた理由」で述べてきたことかな。


①最高にクリエイティブな人たちと一緒にはたらき(be よりであるが...)、
②最高にクリエイティブな業績を成し遂げ、
③以上をもって、社会をドラスティックに変革する。


ちなみに僕はこれを、医学・薬学・ヘルスケアといったドメイン・分野で行いたい
自分の強みと知的好奇心がそこにあるからだ。

軸2. To Be


この見出しの最初でいう一言、決め手をつくったのはおそらくこっちだ。

より精神的・知的に満たされた状態で永遠に努力を続けられるだろうというイメージがついたから。研究なら、絶対にひよらない自信がある。


自分の人生における満足度(?)的なものが高い瞬間を振り返ってみると、
「特定の目標に対して、自分を信じたうえでまっすぐに突き進んでいる状態」
というのがある。受験期とかもそうだった。

無我夢中に何かゴールに向かって走る状態がとても気持ちいい。知的に。
この知性の心地よさこそ、自分が求めている状態だと気付いた。

特定の技術を身に着けたり、特定の知識を蓄えたり、
そしてこれらをもって特定の成果を出したり。。
そのために自分がしっかりと計画を立てて無駄なく努力している。

限界ぎりぎりまで目標達成のために必要なことを遂行してる状態。
こういう厳しいけど成長しているという過程にこそ、
哲学的なエロスというべきか、もはやセクシュアルともいえよう自身の欲求が存在する。

それを満たすことができるのはどちらか?
間違いなく、僕にとってのそれは「学術研究」であった。



マトリクス式 メリットデメリットの整理


かなり複雑かつ多様な要素が絡み合った

なんてことを、冒頭で言っていた。簡単に述べようとすると以下の要素は不要なのであるが、ここからは、その複雑かつ多様な要素についてを洗い出しておこうと思う。

というのも、これから述べるような要素も、少なからず僕の選択に影響を及ぼしていたりするからだ。選択期間においてこれらが脳内の少なからぬ割合を占めていたと言い換えることもできる。

下記の2*2軸=4区分マトリクスでそれらを述べていく。

①国内スタートアップ vs 海外研究ポスト
②やるべき(背中を押される) vs やらないべき(躊躇する) 理由


①国内スタートアップをやめた理由


・本当の意味でのベストな会社が見つからなかった


60%マッチくらいのところしか結局見つからなかった。
スタートアップで躊躇してた最大の理由はここの気がする。

ガチでフルコミットできるだけのビジョンとかを掲げてたり、
いい事業を展開してたり、
最高の文化をもってたりするところがなかった。


それはなんでだろう?
ってところまである程度分析してなんとなく見えた。

これまでめちゃくちゃたくさんベンチャー企業を見てきたんだけど、
結局評価されたり、スポット浴びるところって、
どこを見ても大別すると2つしかない

日本のベンチャー100選みたいなのも95%以上これが当てはまる。

  •   ①(ビジョンのない)人材系
  •   ② マーケティング, コンサルティング会社 

どうやらこれらが、ベンチャーで成功するための鉄則らしい。
成功してるベンチャーはどこを見ても事業ドメインやビジネスモデルが少し違うだけで、分けてしまえばこのふたつで終わり。

あとは資本主義っていう定められたフィールドの中で
限られたパイを奪うためのゼロサム的な競争してるだけ。


...という状況で、僕が本当にやりたいことができるんだろうか?
って考えた時に、僕もこの世界に足を踏み込んだら
この泥沼にはまってしまう気がした。

泥沼がやりたいことならいいけれど、ちょっとそうではない。
たしかに、今の二つ挙げたものであっても、市場が新しいからこそ
新規事業として成り立ってビジネスが回っていくわけだ。

それでも、これは僕が言う「横展開型のゼロイチ」に過ぎない。
一定の決まったルールやお作法があって、それにのっとってやれば
まあそこそこは成功できるわけですな。



まとめると、

スタートアップはいったら社会人として急成長はできそうだし、
やってて楽しそうとも思う、この人たちとならいいものを創れそうとは思った。

しかし、それがいいものだからといって僕が創りたいものではない。


・いつでもここには戻ってこれる


もう一つのスタートアップをやめた理由はここだ。
自分に「イケてるスタートアップ」に対する適正があることは就活を通してわかった。

逆に言うとこれは、いつでもこのフィールドに戻ってこれるということだ。
大企業ではあるまいし、尚更そうだと思う。

だったら、3年間チャレンジしてダメだったときに、
こっちに戻ってきたらいいじゃないか、そう思えたのだ。



なお、スタートアップの特徴として、成長スピードなどが挙げられるから、
3年たてばそのスタートアップはもうつぶれるか、
安定期にはいるか、成長しきって
大企業になっちゃってるんじゃないのか?だから戻ってこれないのでは?

みたいな話もあるだろうから先にいっておく。
別の会社でもいいから、3年後には3年後の「イケてるスタートアップ」が出てくるはずだ。というか、そうじゃなかったら日本はもう終わりってことですよ。

だから、3年後には【3年後のイケてるスタートアップ】に入ればいいのだ。
 (※この人と働きたい!みたいな話があったらその会社しかありえないので、選択は慎重になるべき。)


②国内スタートアップにいくべき理由


・そこそこ安定した収入


これは言うて大事な軸だった。
 ポスドク的なポジションになった場合、海外で研究するなら常に収入どころか生活が死活問題となり得る。

 大企業と違ってスタートアップの収入は低い...みたいな話をしてる人がいる。
 が、言うても年収400-500万円くらいはある。初任給から。
 それなら十分生活できるじゃないですか、子供一人くらいならいけますよ。

 贅沢はできなくても、困らないレベルの収入が充分得られ、
 その状態で新規事業創ることにのめりこめるのは本当に幸せだなと思った。


・余裕のある時間(アフターファイブ的な)が使える


スタートアップに行く場合、僕はそこに永住しようとなんて考えないタチだ。
 将来絶対自分の居場所(法人)を持ちたいと思っているので、
 それをするために必要なビジネスを学ぼうとしてる。

 だからこそ、100%会社にコミットするのではなく、
 入った時点から85%コミットくらいにして、
 残りの5%をプライベート、10%を自分の事業企画に使うなんてことができる。

 やっぱり志の大きい社会人に聞いてみても、
 アフターファイブはとっても時間があって、
 使い方次第でとんでもなく幅が広がるときく。

 それが魅力的。
 きっと研究する場合は打ち込まないとなので、
 ほぼほぼ100%が研究になる。

・幸せな家庭生活へのイメージ感


スタートアップに限らず、企業に行く場合はこれ、ある。
 上記、収入と時間があってこそ達成されるのがここで、
 幸せな家庭を築くという点に関しては問題なくできるであろう。

 将来子ども欲しいと思ってるし。


・スピードのある成長感(会社と自分)


 会社が急成長していく中で自分もここにいれば、すっごいスピードで成長できる。
 ベンチャー言った場合、最速で3-5年くらいで役員にまで行けるイメージ感が沸いた。

 そもそもこのスピード感で仕事してるっていう状態が好きだし、
 加えて、仕事の成功や昇進もついてくるとなったら、
 なんとなく行きたくなる。

 そう、経営企画とかで新規事業づくりして成功するイメージが持てたのだ。
 (過信とは言わないで!)

・ビジネスの仕方を地に足つけて学べる


-新規事業の作り方 -お金の取り方

先述したが、自分でも法人を持ちたいと思っているので
上記二点が学べるのは大きい。とても。

スタートアップだったらなおさらである。
規模間に適したやり方が学べるだろうし、
何より、経営陣のすぐそばでそれを実践しながら見学できる。




③海外に行くべき理由


◆心の鐘が少し揺れた


冒頭で書いてきた通りなのであるが、追加して書くとするなら、
次、友達とか家族に会ったときにワクワクして話ができる
 というのがある。


誰かに近況報告する瞬間をイメージしたとき、
どっちの方が、自分がワクワクして話しできるか?(結局好きなことしてるか?)
そして自分の身近な相手にわくわくしてもらえるか?

これもかなり重要な判断軸となった。

◆チャレンジできる最低限のスキルセットがある


そもそも論、海外行って研究しようなんて思ったら、
世の中的には相当レベルの高いスキルセットが必要とされることは言うまでもない。
例えば次のようなスキルセットがいるだろう。

・英語を問題なく読み書く、話せる
・執筆系の業務に適性がある(論文・助成金・総説やメディアなど)
・自身でアイディエーションし、それを実行に移せる
・グラントを自ら獲得できる
(・学生をティーチングできる)

ここで脱落する人も多い。相当数いる。

こんなスキルセットを要するにもかかわらず、
それを問題ないだろう、と少なくとも自己分析できている自分がいた。

だから、これは僕にはチャンスが与えられている。と思った。
そう考えると、ちょっと前に進む勇気がもらえたのだ。


◆3年間ならまだチャレンジしてもいいぎりぎりのライン。


結果が出なければ第二新卒で戻ってこれる。

ベンチャーならまた戻ってこれる自身がある。適性があるから。
なら、今ベンチャーいかなくても、ちょっと3年くらいチャレンジしようかなと。


◆チャレンジしてダメだったときに潔く諦められる


海外行くと、たぶんノイズがない状態で研究にフルコミットできる。
日本で今、僕はそれができていない。

この違いは成果に対して雲泥の差を創り出すと思う。

そして僕のありたい姿は、死ぬほど努力している状態である。
フルコミットだ。
それができそうなのが、海外ポスト。


そしてそうした場合、、
自身ができる限り最高の努力をしたとしても、
結果が出なかったら、それはもう自分の責任でしかない。
結果が出なかったら、それが自分の責任になる。

外圧以外の理由がなくて、すべて自分のせいだ。
「あれだけ努力してもダメだったなら仕方ない。」
ダメだったときにそのように諦められるのは、きっと海外での研究だ。
これだけ努力してもダメだったんならって絶対なる。


もちろんそうした場合、僕はきっと泣きに泣いて帰ってくるんだろうけど。
そしたら帰ってきて第二の人生の幕開けさ。


◆40代で教授ポスト, PIを持とうと思ったら...


リアリティは、絶対アカデミアの方が高い。って思ってしまった。
別に企業就職しても、今やアカデミアポストで戻ってくることは可能だ。

実際にそういう人も増えてきている肌感がある。
ただし, そういう人は40歳ではない。
50歳くらいの人が多いイメージだ。

しかも、特定の分野に対して明らかな技術を持っている時。
たまに「industry → academia」の流れで技術導入が起こるときがあるんだけれど、
そういったときにおけるindustryの人材はアカデミアでは
とっても重宝される。そのパターンで戻ってくる人だ。

あとは特殊なコネクションをもってたりとか、
別では知財系に強いからTLO部門でアカデミアきたりとか、、

こういうの考えてると、企業から得られるアカデミアポストは
 僕のイメージするPIになれる確率って結構低そうだ. なんて思ってしまった。


僕がやりたいのは、自分の研究室をしっかり持ったうえで
ちゃんと自身のアイデアでトップジャーナルに載せられるくらいの
革新的な技術・システム・概念を創造し、これを実装することによって
社会に影響を及ぼすということだ。

これを踏まえると、どう考えても
アカデミアでトレーニングを積んだ方がいいな、ってなる。


④海外をためらった(やめるべき)理由


・収入


これは言わずもがな。
 本当に今でも怖い。
 
 ポストを得られた際は1,2年間は大丈夫だろうけど、
 まずここ直近で自分で300-400万円くらいはゲットしにいかないと。!

 海外ならポスドク収入は高いけれど、
 そのポジションでちゃんと雇ってくれるかどうかが問題なのだ。

 ということで、これは次の問題点から派生して出てくるものだと今気づく。

・業績とポストの発見


 他の同期で研究職チャレンジをしようとする若手と比べて、
 僕は圧倒的に業績が足りていない。
 毎回比べてしまっては自己嫌悪に陥るわけだ。

 そしてこの業績のなさが影響してくるのは、
 自分が海外ポストを獲得するときだ。

 Applyするとなると、必ず業績を見られる。
 そこで、Nature姉妹紙出しているような同期だったら問題なく
 いいラボでいい研究させてもらえるんだろうけど、、、。

 僕の場合は修士さぼってたのと、
 学士・修士・博士ですべて研究テーマ変わってるのとで、
 本当に小さな業績しか持ち合わせていない。


 こんな武器で闘えるのだろうかというレベル。。。
 ここが最大の躊躇した理由。
 業績のいい学生の方がポスドクとして雇ってもらいやすいに決まってる。
 そうなったら、僕は本当に海外でポジションを取れるのかどうか...。




 この大きなハンデを逆転できるくらいのハイインパクトを出すための努力を、
 もう今からしていかないと間に合わない。。



 とかいいながら、もう腹は括ってあるので、
 これで勝負しに行くしかないんですけどね。


 やり抜こう。
 まずは博士論文を少しでもいいjournalへ!