2021年2月8日月曜日

博士3年のポスドク就活事情;JREC-IN使って1カ月であっさり博士研究員オファー3ラボ内定【ポスドク先選択7か条】

* 株式会社アカリクさまからご招待いただき、
  本記事は「アカリク アドベントカレンダー2021」に参加しております。
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あれだけ不安だった「ポスドク先が見つかるのか問題」は、あっさりと解決された。
さきに結果だけ述べておくと、1月5日から始めたポスドク先を見つける活動、たったのジャスト1カ月で終わりました(2月5日)。

僕みたいに全く業績出てなくて、こんなに苦しくてもがいてもがいて、結婚して家庭もあるのに明日の飯も食えるかわかんない、みたいな状態でも、決まるときがきたら、あっさりと決まると伝えたい。その時まで、心を無にして目の前の仕事に向き合うこと、その忍耐強さ、Patienceだけが求められる。

行先:名古屋大学理学研究科
内定先:名古屋大学理学研究科、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)から2ラボ

*当初は海外ポスドクを考えていたのですが、ご時世なども鑑みて結局国内のラボだけにアプライしました。





目次



1. 卒業寸前!1月から始めたポスドク就活フロー

2. プライベート:驚異の賃貸解約

3. 各ラボごとの面接スタイルの違い

4. 決め手:より取り見取りで選ぶとき


1. 卒業寸前!1月から始めたポスドク就活フロー


自分が博士就活をどのようにして終えたのか、終わったので書き出しておきます。
誰かのためになると信じて。日本にポスドクは今15,000人くらいしかいないそうですが、毎年のそのくらいの人たちの一人くらいはみてくれるのではないかと。

お伝えしたいのは、1月になってからでも間に合います、ということだ。
正直9,10月頃、秋口から論文もまだ出てないしで気が気ではなかったのですが、終わってみれば何のことはない、という感じでした。周りにD3の学生なんていないから相談もできないし、もういいやとニートさえ覚悟の心境でしたが(けっこうまじです)、そんなに焦る必要はなかったみたいです。

卒業まで100日を切った中で始めた博士就活ですが、結論30日で終わりました。

【ラボへの公募フロー】


●1. 応募する:1月5日ー1月15日くらいまで

60lab くらいを一気に洗い出した(JREC-IN)を使いました
  (←ここだけ年末年始元旦にやってました)
1月5,6日: 履歴書、業績書をつくって、手始めに6labにメール出した (ほとんど旧帝大、1ラボだけ母校慶應に出しましたが音沙汰なし) 
 
 →1月10日頃まで:4/6 labは既に候補者確定済みでした
          うち1labからは謎に先生の持ってるベンチャーCTOに誘われる...
          1labはいまだに返事来ず, 1つ面談依頼(→続いて面接へ)

 →1月15日頃まで:ベンチャーに誘ってくれた先生から、
          やっぱり、博士研究員での面談をしてくれと依頼が来る。
          さらに追加で1ラボ公募が出たので出したら速攻面接依頼きた

 
●2. 面接する

このようにいろいろあって、結局上記3labと面接までこぎつけた。
3. で後述するように面接スタイルは各ラボ本当に十人十色な感じでした。ぜひ参考までにご参照ください。ここでは、面接が日取りごとにどう進んだかを少しだけ詳述。

正直かなり準備にプレゼンにと慌ただしかったです。
まじでよかったと後から思うのは、①僕自身、プレゼンが比較的得意であったこと(したがって、準備にそれほど時間を取られなかったし、怖気つかずプレゼンできた)そして、②英語でのプレゼンもおっくうではないレベルにはトレーニングできていたこと です。

 ー1月23日: 面接1か所目(土曜夜18:00-21:00くらい、急遽現地で)
 ー1月29日: 面接2か所目(後述するが全て英語で60分)
 ー1月30日: 面接1か所目からオファーいただく(返答は1週間以内とのこと)
 ー2月1日: 面接3か所目
 ー2月1日: 全3つのラボとの面談・面接が一気に終了する、
      同時に2,3か所目からオファーいただく
       *即日オファーを頂けたのだが、これはあらかじめ、「すでにオファーをいただいているところから即答を求められている」旨をお伝えしていたから。正直が大事。

 ー2月5日: 選択して、1つのラボに採用手続きのお願いをする
            同時に他のラボに、逆お祈りメール(お断りメール)をいれる。


振り返ってみると、まあまあ立て込んでいた中よくぞ準備して乗り切った。
1月末ということで、実はプライベートの方でもそこそこ動き始めていたところでしたので、その面でも多忙でした。

2. プライベート面:驚異の賃貸解約


閑話休題ではないですが、プライベート面ではなんといっても、卒業2カ月前。
「次の就職先が決まっていないにもかかわらず、自宅の賃貸を解約する」という事態に追い込まれていました。

1月末までにお伝えしなければ延長料金?みたいなのがかかる契約だったので、自分を追い込むためにも、1月末に嫁も含め二人の賃貸を解約。これはまあまあ勇気のいることでした。

それから人生とは不思議なモノでして、博論が落ち着いたらもう、あれやこれやといろいろ降ってきたわけですね。ないがしろにしてしまっていた団体での活動再開や、さらなるプロジェクトへのお誘い(研究ではない)が2件くらいあったり、、。


そしてもう一つ、論文の受理採択(アクセプト)に伴った大きなプライベートでの意思決定が【結婚式】でした。1月中、上で述べたようなポスドク就職活動を行いながらも、フェアに言って式場決めて...ってなことをやったりで、今も準備に奔走中です。忙しいのが、嬉しいこと続きであるのが救いです。



3. ラボごとの面接スタイルの違い


さて、話題を戻しまして、ラボごとでどんな面接をしたのかご紹介。
3つとかラボの面接受ける人、留学する人ならけっこうたくさんいるが、国内ではどのくらいいるのだろう。まあ誰の参考にならなくても、勝手に紹介しておきます。

【Lab A.】即レス即面談


・書類を出して2時間くらいでPI(教授)から、面接以来の返事がきました
・交通費払うから、土曜(たしか水曜とかだった)に来てください、と。
・コロナ禍ではありますが、現地でやりました。
・土曜:18:00-21:00くらい(バッファー含む)

 ー内容;25-30分間の研究内容プレゼン 60分くらい質疑とディスカッション
     ラボツアー 30分くらい
     PIと准教授の二名で面談;30分くらい

 ー誰と;セミナーは、教授、准教授、学生5名くらい+オンラインから3名くらい
     っていう感じでやっていただきました。

◆Positiveな所感◆
・ジョブディスクリプションが明確で、かつこのような状況下でもラボにinviteしてくださるなど、仕事のイメージがクリアになるような選考過程をつくってくださった。
・ラボメンバーとのディスカッションの心象が大変良かった。高いプロダクティを感じた。
・関連して、真摯に自分の研究に興味を抱いてくださる点も印象が良かったです。
・総じて【この人たちと一緒に仕事をしたい】と思える雰囲気。
・2年で成果をきちんと残せるか?という観点で一番残せそうだった。

◆Negativeな所感◆
・突然電話が来るなど、対応が雑なのか、迅速になさっていただいているのかが判断つきにくかった。
・オファーいただけたラボの中では最もハードワークが課されると思いますので、プライベートとの両立が不安。
・メンバーが多く、competitiveな環境になることは間違いないので、そこでしっかり生き残らねばと背筋が正される。



【Lab B.】懇切丁寧に;面談→セミナー面接


・書類を出して2、3日くらいでPI(教授)から、面談依頼の返事がきました
・日程調整して、教授と1on1でzoom面談しました。

 ー面談内容;
 ここでは、何をやりたいのかとか、本当にお互いがメリットを出せるのかとか、研究の内容は軽く触れる程度のディスカッションで、メインで話したのは、目指す方向性や文化の話をたくさんした気がします。

・再度日程調整して、今度はzoomでラボメンバー+PI 計10名ほどで
 セミナー面接+ディスカッション

 ーセミナー面接内容;45分間:研究内容を英語でプレゼン(30min)+研究提案(15min)
     20分くらい質疑とディスカッション
     PIとポスドクスタッフ、研究所の人事の3名で面談;30分くらい

ここでのセミナー面接の特徴は、【研究提案をせよ】ということでした。
面談時、【あなたの企画力を評価します】とのことでしたので、しっかりと先生のラボの論文と関連文献や関連知識を蓄えたうえで当日に臨みました。準備には7日与えられ、でも結局2,3日くらいしか準備には使えなかった気がしますが、評価はgoodでした。



◆Positiveな所感◆
・面接の過程が大変に丁寧で、お互いにとってのメリットになるかを最もしっかり見極めてくださった。
・セミナー面接の際に、とてもプロダクティブなディスカッションができた印象。ひとりひとりのレベルが高く、かつ楽しくディスカッションができたので、一緒にこの人たちと研究したいと思いました。
・メンバーが少数精鋭で教授先生も含めて大変近く仕事をされていることが好印象でした。


◆Negativeな所感◆
・今まで自分がやってきたことと、ラボで目指されている方向とに乖離が大きい印象:
 クリニカルアプリケーションを目指そうとする視座の高さに尊敬の念が絶えず、将来そのレベルに達したいが、まだこのラボで研鑽するには少し早いと思いました。
 しっかりトレーニングを積んで、もう一度腰を据えて5年などのスパンで一緒に仕事ができたらと思います。

研究スパンの観点から;
 お伝えした通り、2年程度の期間で海外留学を考えております。先生の研究室でのテーマはどれも大きな仕事が多く、やはり2年という期間ではお互い少し苦しいのかもしれないと考えました。

成果の観点から
個人的な事情ですが、これまであまり誇らしいとはいえない成果でやってきているため、ポスドクでは少し成果に貪欲にならねばPIになれない。ここでは大きな仕事が数年後になって成果となるかもしれませんが、やはり2年ではコントリビューションが小さいまま中途半端になってしまいそうだと懸念。



【Lab C.】セミナー面接、教員面談


・ここは、最初先生の持っているベンチャーでCTOをしないかと提案してきた。
・後日、やはり博士研究員でも考えていますので面接をお願いしますと。
・こうして、zoom面接を実施。

 ー内容;10分間の研究内容プレゼン 15分くらい質疑とディスカッション
     PIと教員5名くらいで面談;30分くらい

 ー誰と;セミナーは、教授、准教授、その他教員ポスドク2名くらい

・10分くらいしか研究紹介の時間が与えられなかったので、かなりクイックなプレゼンになってしまったという所感。。

◆Positiveな所感◆
・提案いただいているテーマ(基盤S)はきっと面白くできるなとの心証。
・海外留学も後押しいただけるという先生の姿勢が大変に心強く感じ、魅力的。


◆Negativeな所感◆
・セミナー型のディスカッションの際、あまり他の教員から質疑が出ない点、比較的寡黙な方が多い点などから、プロダクティビティの高いディスカッションができるかどうかという点に疑念。
・関連して、一緒に楽しく仕事ができるか?という観点で、「この人たちとうまくやるのは難しいかもしれない」との事後所感。
・ラボメンバーと成果・留学等でcompeteしてしまう可能性
・研究内容はとても面白いのに、アプローチがやや微妙な気がする

4. 決め手:より取り見取りで選ぶとき


正直、ポスドクは選べないだろうと思っていた。
にもかかわらず、土壇場で3つの研究室からオファーを頂けたのは紛れもなくタイミングがよかったし、自分の能力や研究内容が評価されて、なにより嬉しいことである。

何を決め手に選べばいいか?ということで考えていたのだけれど、正直【これが決まれば決まる!】という決定打は存在せず、上で述べた所感を総合して決めた感じだ。

お給料は3つのうち1つから提示された(年収400万円くらいですって)。
まあ、どのラボに行ってもたぶんこんなもんだと思う。
特に僕がオファーもらったところは多分そのくらい払ってくれる。
だから、お給料ではくらべられない(し、よっぽどじゃない限り比べるつもりもない)。

かといって、まったく基準がなかったわけでもないので、言語化して列挙してみます。
ポスドク先選択7か条 とでも言っておいて筆をおくことにします。

  1. そのテーマ、ライフワークにしたいと思えるか?
  2. 今までの自分の技術とのシナジーを出せるか?
  3. 転じて、自分はそのラボでレアカードになれるか?(持ってる技術・専門性)
  4. 2年間で成果(原著論文1報、共著2報が理想)を出せるか?
  5. 2年以内に海外ポスドクに挑戦させてくれるか?
  6. ラボに十分なお金はあるか?(お金なくて実験できないは✕)
  7. これから社会的に注目されそうな分野か(伸びそう?公的資金がおりそう?)?


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参考URL

<ポスドク就活について>
次のURLを参考にさせていただきました。
・JREC-IN:https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekTop

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ポスドクの流儀〜悩みを解きほぐして今日から行動するためのチェックリスト