2016年6月17日金曜日

スマートファブリックがアツい!コンピューターを着る時代の到来〜賢い衣料で、よりよい医療を〜

スマートファブリックとは...


最近、スマートファブリックという言葉をちょいちょい耳にする。

スマートファブリックとは、「着るコンピューター」を実現するための素材のことだ。

小さな半導体やセンサーを衣類に埋め込むという手段によって

人間の行動をモニターしたりデータ化したりといったことができるようになる。

こうしたテクノロジーは間違いなくこれからの医療に対しても

少なからぬ影響を及ぼしてくるだろう。


そこで今回は、スマートファブリック登場の背景から
その今後の展望、医療への応用についてまで考えてみたいと思う。


<目次>
1. スマートファブリック登場の背景
2. スマートファブリックの例
3. 医療への応用
4. 今後の展望


1.スマートファブリック登場の背景...


調べてみると、スマートファブリックの概念自体は結構前から登場している。

具体例は後ほど挙げることにするが、2011-2013年頃から既に
研究開発、プロトタイピングも推進されているようだ。

さて、それではどうして「今」、スマートファブリックなのか。
筆者は二つのキーワードが関連していると考える。


「IoT」「ウェアラブル」だ。

IoT時代がやってきて久しく...


IoTという言葉を聞くようになってとても久しい。

リアルワールドに存在するありとあらゆるものを全てを
インターネットに接続してしまおうという考え方が
Internet of Things、すなわちIoTであるが、
そのデバイスの数は500億台規模にまで膨らむというような予想もなされている。

ウェアラブルデバイスといった言葉も耳にタコができるほど耳にするが、
これもIoTを推進するための手段である。

ところが、ウェアラブルには決定的な問題点がある。

それを乗り越えられるのがスマートファブリックだと筆者は考えている。

さて、それではウェアラブル端末の抱える課題について考えてみよう。

ウェアラブルの抱える課題


ウェアラブル端末といっても幅広い。

腕時計型のもの、眼鏡、手首足首に巻きつけるバンド型のもの etc...


こうしたもの全てに当てはまるとまでは言わないが、
概してウェアラブルの抱える課題として、

「常に身につけているわけではない」、「身につけなくなる」などが挙げられる。

人間は怠惰なもので、やらなくていいことはやらなくなるし、
なくてもいいものはつけなくなる、と筆者は考えている。

ここを乗り越えて、
パンツとか靴下とか、衣服とか、、

人間的な活動をしている時間は常に必ず身につけているものに
インターネットが組み込まれていること

ここに大きな意味があり、
だからこそ、IoT推進の新たな起爆剤として注目を帯び始めているのだと考える。


2.スマートファブリックの例


さて、ここでは「OMsignal Shirt」というスマート・シャツを例として紹介しよう。
早速、OMsignalが2013年5月に公開した動画をご覧いただきたい。



OMsignal Shirtは、着ている衣服に埋め込まれているデバイス、センサーが
健常時の心拍数や脈拍、呼吸リズム、ストレス状態などをモニターしてくれて、
瞬時に連動しているアプリへと情報が蓄積されていく。

「OMsignal Shirt」の発売日は未定とのことであるが、
既に三年前から開発が進められているとのことで、我々のもとに届けられる日も
近づいてきているのではないであろうか。


3.医療への応用


ここまでつらつらと紹介してきたスマートファブリックであるが、
医療への応用が最も期待されているのではないだろうか。

先ほどの「OMsignal Shirt」の例をとってみてもいつくか例を考えられる。
例えば、健常時から心拍数をモニターしてくれるということで、
心臓突然死の予兆をアラートしてくれるシステムを構築すればこれを
未然に防ぐことだってできるかもしれない。

ストレス状態のモニターなんかをとってみても、
深呼吸をとるタイミングなどをアプリが提案してくれるだけで、
そうした少しのカラダへの配慮が
精神疾患の発病を防ぐポテンシャルさえ持っているかもしれない。


そして個人的に何より期待されるべきは、

「常時モニター可能」という利点である。

ウェアラブルデバイスの項目で言及したように、現状のウェアラブル端末の場合、
どうしても「つけない」、「着ない」、「ちょっと邪魔」といった理由から、
つけない人が出てくるのが問題である。

特に医療、ヘルスケア分野の場合、データの信頼性や正確性が求められる。
こうした領域において、切れ目のないデータが得られるという点は
データの信頼性を高めるという点で大変大きな意味をなすと考える。

4.今後の展望


先日公開されたIBM mugendaiの記事によると、
形状記憶ポリマーや3Dプリンター技術と組み合わせた応用など、
体内でのスマートファブリックもうたわれている。
(参考→ http://www.mugendai-web.jp/archives/5427)

スマートファブリックの次のアイデアとしては、
体内埋め込み型」という考え方がきているような気がする。
すこし怖いような気もするが、先に述べてきた
「着ない」「つけない」の問題を究極的に克服したのがこの形であることは間違いない。


実際、スマートヘルスケア社会への変革に向けた研究所として
「体内病院」の実現を目指す研究所なども設立されている。
(参考→ http://coins.kawasaki-net.ne.jp/concept/)
神奈川県川崎市にあるCOINSという最先端研究施設で、2015年春に創立されている。


こうした動きが推進されていくのはいいことではあると思うが、
ひとつ、やはり体内に埋め込んだ時のデバイスの長期的な身体への影響、
ここは大変きになるところである。

課題として、ウェアラブルについても、なんならスマホについても言えることであるが、
30年40年という長いスパンで身につけている場合への身体的影響について、
我々は常に留意しながら研究開発を進めていく必要があるであろう。