新型コロナウイルスによる肺炎、これだけ見とけ
出遅れた感が否めないけれど、
ずっと情報はキャッチアップし続けていた。
だからこそ、いろんな情報キープしてたので
ここいらで一気にまとめて整理 / アウトプットしようかと。
そもそもコロナウイルスってどんな存在かというお話から、
現在に至るまでの経緯や国・世界の対応、
致死率、感染防止策、疫学情報、治療薬の有無などなど。
サイエンティフィックな情報、医療系に寄った情報など片っ端から、
自分の頭の整理のためにもいろいろまとめてみた。
情報は、集積されて体系化されることで、知識・エビデンスになっていく。
専門家でもいろいろ違うこと言ってたりするので、
その情報についてメタアナリシスかましてみても面白いこと分かるかもしれないですね。
目次
そもそも、コロナウイルスとはどういうウイルスなのか
- 2019nCoVウイルス自体の概要
- 今回のウイルスの、全ゲノム配列
- 発生経路(どうして発生したのか)
疫学・基礎情報
- 致死率
- 症状
- 潜伏期間
- アウトブレイク・エピデミック・パンデミック・エンデミック 感染経路とその拡大について
- 飛沫感染・空気感染・接触感染
感染予防策
治療薬はでてくるのか
- すでにRCT(治験)が開始 役立つリアルタイムレポートや最新情報など
最新論文・サイエンスに関連して
海外の見解
その他問題・懸念点
まとめ
そもそも、コロナウイルスとは
ここから始まってる記事が少なすぎる(その点、日本ウイルス学会が、2月10日に出した声明がちゃんと説明していてさすが。)。
多分みんなこんな情報求めてないからなのだろう。
医療従事者も多分見ていないところだと思うけど、サイエンティストは「どんなウイルスだっけ?」という問いを投げかけると、次のようなことを思い起こし始めてしまうわけだ。
コロナウイルスの概要
|
表面の突起が特徴的で、「王冠」ににている。
これにちなみ、ギリシャ語でコロナと名付けられた。 |
◆コロナウイルスは、一本鎖RNAウイルスと呼ばれるウイルス分類に属す。もっと正確には、一本鎖プラス鎖RNAウイルス(Positive-sense single-stranded RNA virus)またの表記を(+)ssRNAウイルスである。その直径は約100 - 200 nm。エンベロープ(E)と呼ばれるたんぱく質で覆われているので、エンベロープウイルスに属する。
※
(+)ssRNAウイルス:この種のウイルスとしてよく知られているのは、C型肝炎ウイルス、デング熱のデングウイルス、SARS, MERSコロナウイルス、そしてかぜ症候群(一般的な風邪)の主な原因ウイルスとして知られるライノウイルスなどである。
**SARS, MERS については後程詳述
◆これまで、人に感染を起こすものは
6種類が知られていた。
4種:通常のかぜ症候群を引き起こすもの(これら4種が風邪の原因の10-15%)
2種:重症肺炎を引き起こすもの...SARS-CoV, MERS-CoV
◎今回発見された2019-nCoVは新しい種類のもの(7種目)
コロナウイルスの概観については厚生労働省のこちらのサイト参照
◆プラス鎖のウイルス核酸は、mRNAとしても機能すするため、宿主中ですぐにタンパク質への翻訳が開始される。
【参考:ウイルスの分類】
現在、多くの科学者の中での認識ではウイルスは「生物」とみなされていない(生物学上の定義)。したがって、ウイルスは生物と異なった括りでの分類枠が存在する。
ただし、今回のコロナの騒ぎをみていても、「ウイルスも生き物で会ってを殺生することはいいのか?」みたいなことを平気で言っている人もいる。ウイルス生物/非生物論はまだ決着がついていないのである。
ウイルスの分類は、生物種の分類(界・門・網・目・科・属・種だとか、真核生物/原核生物/古細菌など)とは別で存在している。ウイルス分類で有名なものとして、核酸(DNA / RNA)の種類などに基づいて7種に分けた【ボルティモア分類】が広く認識されている。
(なお、ボルティモアは逆転写を発見したデイビッド・ボルティモアにちなむ。彼の提案した分類法である。)
【参考:かぜ症候群の原因】
風邪はどうして発症してしまうのでしょうか。
基本的に風邪はウイルスが原因で発症することがほとんどだということがわかっています。そのうち、(新型ではない)コロナウイルスが原因の風邪は10%くらいだと言われています。
新型ウイルス(2019-nCoV)の全ゲノム配列はとっくに解析されている
発生経路(どうして発生したのか)
起源としては、コウモリ説が濃厚。
そしてヒトへの感染経路としては、海鮮市場(Seafood Market)でほぼ確実だろうと
Nature誌に報告されている。ここでは、2019年12月で最初の症例報告がなされた7名の検体を解析し, うち6名が武漢(Wuhan)の海鮮市場で働いていたとしている。
これらのウイルス検体の塩基配列を解析したところ、SARSウイルスとは79.5%の相同性があった。さらに、コウモリのコロナウイルスとは全ゲノムが96%同一配列であったということが根拠だ。
なお、20年2月3日に発表されたこの論文が、2019-nCoVとコロナウイルスの名前を規定し始めた起源と起源となっている。
※優しいことに、nature asiaが論文全体の概要を日本語訳して出してくれている。
疫学・基礎情報
もうこの辺の情報は山ほど世に出回っているので、まずはためになるURLをペタペタ載せていきます。
◆15分でわかる 新型コロナウイルス
(2019-nCoV)感染症(2020年1月30日修正版)
・どんな人が感染するの?
報告されている死亡例はほとんどが65歳以上の高齢者で、既に病気を持って(基礎疾患)いたりした人が多い。1月時点では、30代などの死亡はほとんど報告されていなかったように記憶している。
・致死率
致死率に関する考察が一般向けに上手く描かれているのはメディカルノートさんの記事
かと思います。ただし、致死率は感染症が蔓延していくに従ってかなり変わってくると
思うので、こちらは2月4日時点ではおおよそこのくらいだな、というスタンスで。
めっちゃざっくり示しておきます。
そして本当にいろんな報告が出ています。ちょっと3つくらい文献を比較してみたら
まあ桁を間違えはしない程度には実態が把握できるかなと思います。2つだけ、出典を明らかにして報告されている致死率を書いておきます。
【メディカルノートの報告(02.04.)】
ー中国湖北省:3%くらい
ーその他の海外:0.2 % くらい
【国際医療研究センターからの報告(02.05.)】
ー武漢:5%くらい
ー武漢以外の湖北省:1.4%
ー中国以外の国:0.5%
◆メディカルノート(2020年02月04日):新型コロナウイルス 致死率はインフルエンザ並みか
◆国際医療研究センターからの日本語論文(2月5日)
・症状
こちらの図がわかりやすいかと。
発熱と空咳, 呼吸器症状が中心症状みたい。
(Yahoo Newsから図を転載., NEJMのデータをもとに作成されている)
続いて、上で共有したスライドの中から抜粋。
SARS, MERSコロナと圧倒的に違うのは下痢などの消化器症状や頭痛の症状がほとんど報告されていないこと(ただし、これは1月23日時点での報告).
・潜伏期間
こちらは藤田医科大学のスライドから。
1月の論文で載ったデータから、
2-14日とされている。これはあくまでも平均程度の値なので、当然個人によっては21日くらい潜伏してしまうこともありうる。
感染経路とその拡大について
感染経路:
飛沫感染・接触感染での感染が知られている
(下記に詳しい)
それぞれの感染経路がどういった感染か?といったことも簡単に書いてくれているので、その点がこのスライドのありがたいところ。
空気感染は、今の所疑われていないということですね。
※なお、飛沫感染と空気感染の違いは以下の資料に詳しいです。
簡単にいうと、こんな感じ。
飛沫感染:すぐに床に落ちる(半径1mいないくらい)
空気感染:飛んでからもしばらく空気中を漂って感染(水分を含まず軽いから)
空気感染の方が幾分厄介だとわかります。
空気感染する感染症の例としては、
結核や
はしか、
水疱瘡など。確かに、これら非常に感染力の強いものたちですね。
【参考】アウトブレイク・エピデミック・パンデミック・エンデミック
めっちゃちなみに。この辺の言葉の違いを明確に説明できる人って案外少ない気がするので、参考までにどうぞ。
アウトブレイク:一定のtime, place, personにおいて、予想されるより多くの感染症が発生すること。ニュースではより限定された地域での流行に使われる傾向がある。
エンデミック:地域・季節的な周期で罹患率が一定している状態。感染症などの伝染病に限らない。
エピデミック:(ある地域での)予想外の(想定した範囲を超えた)エンデミック
パンデミック:エピデミックが世界の広範囲で同時多発的に発生している状況。
参考:https://talking-english.net/pandemic-epidemic-endemic/
感染拡大について
知り合いがわかりやすい図を提供していたので、こちらをシェア。
どんな感染症についても患者推移モデルというものがある。
①急速な指数関数カーブで患者数が増える(緑点線)②隔離や免疫保持者が徐々に増えていく(赤点線)③収束へと落ち着いていく
今回のコロナウイルスう感染症についてもおそらく漏れなくこうした形で感染が進行していくのだと思っている。3月上旬時点、ようやくもしかしたら武漢での感染者数の指数関数カーブが漸近線にたどり着きつつあるかな?って感じで、これからヨーロッパや他のアジア諸国でのカーブが急速になるでしょうね。これが落ち着くのが大体多分4,5月くらいだと思う(完全に推定)。。
となると収束宣言は夏頃なのでしょうかね。
日本の死亡率は極めて少ないように見えるので医療機関は数字から判断するととても頑張っていると思う。ハイリスク群(基礎疾患保持者や高齢者)の感染にしっかり気を遣えば死者は最小限にできると思う。
(テッシュを爆買いして家に持って帰る体力のあるような人は感染してもまず死なないっていう過剰な言い方もできる。)
感染予防策
ちなみにうちのラボでは秘書さんの独断と偏見でこちら
クレベリンを大量購入。知り合いの薬剤師によると、これ、たくさん病院の待合室などにも置きはじめているそう。
ウイルスや細菌の殺傷効果は99%ということで、
ほんとうにそうなのかどうかはわからないけれど、
気休め程度にはなるだろう。
※大量購入するとまたマスクみたいに品切れとかになっちゃって本当に必要な医療機関などに届かなくなる事態が発生するので、購買する場合は必要な分だけでお願いします。
【Amazon.co.jp 限定】クレベリン 置き型 150gx2個セット
※クレベリンの正しい使い方
ー高いところに置く方がいい
(二酸化塩素は空気よりも重いため、発生した気体は上から下に行くから)
ー金属の近くにはおかない。
塩素は金属を腐食してしまう。
そのほか、昔支持していた京都大学の先生による感染対策についての記事が出ている(2月7日)。こちらでは、「症状の出ない感染者が多い(不顕性感染)」ということは、「感染していても症状が出ない人が多い」つまり軽症でもあると言えるとされている。
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/154592
実際、致死率も武漢などの発生源を除けば1%かそれ以下くらい(インフルエンザと同じくらい?)と言われているので、過度にマスクやティッシュを大量購入するのはナンセンス。気をつけるべきは、元から体の弱い人(すでに病気を抱えている人)や高齢者だと思っています。
治療薬はでてくるのか
役立つリアルタイムレポート
個人的にいつも見ている情報が2つある。
どの国で、どのくらいの罹患者・死亡者・回復者が報告されているのか
などの情報がリアルタイムにわかる。
どちらも一日に数回更新してくれている。しかも見やすい。
ちなみに、2020年1月31日(19:40)現在、罹患者は1万人に到達しようとしていて、死亡者は世界で合わせて213名と報告されている。
ジョンズ・ホプキンズ大学のチームが1月24日に新型肺炎地域のGISマップを作った。
ちなみに、これを模倣して作った日本バージョンも存在している。
ジャッグジャパン株式会社というところが, WHOや厚労省などの機関の発信する情報を元に作っているみたいだ。なお、この会社は政治選挙に関するITコンサル会社みたい。
(
https://jag-japan.com/)
◆都道府県別コロナウイルス感染者マップ
https://jagjapan.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/641eba7fef234a47880e1e1dc4de85ce
ジョンズホプキンスに先行して、年明けすぐくらいの段階でBloombergが作成してた。
こちらもほぼリアルタイムに情報が更新されているし、時系列データなんかも簡単に眺めることができる。
【お役立ち情報】
◆怪しそう/ 変 なニュース一覧
なんか正しそうなやつばっかり載せててもそれはそれでバイアスなのかなぁと思ったので、思い切って変なニュースもちょっとだけ載せておきます。信じるかどうかは自分で判断してください。
・2020年1月28日 いきなりコロナ専用の1000床の病院ができたってよ
◆その他ウェブに出ている記事抜粋
ほんの一部だけ、ただのニュースっぽい記事も抜粋。こういうのはアクセス稼ぎのフェイクニュースだったりすることも多いんですよねぇ(今回抜粋のものは比較的まともなものを載せているつもり)。。ちゃんとした判断を。
・2020年2月13日 「パニックにならず必要な対応を」新型コロナ 医師の見解
【Blogやメディア等、個人発信の情報やコロナを取り巻く社会の話など】
・緊急事態宣言下で今、検討すべきこと
保険医療2035の検討委員会あたりから注目を浴び始めた慶應の宮田先生の記事。
・これで「軽症」と言うのか。新型コロナ感染で入院中、渡辺一誠さんの手記
・外出自粛のストレスとどう暮らすか 〜「インターネットコオロギ」にならないために。
・開疎化がもたらす未来
Yahoo CSO, 慶應SFCの安宅さんの記事
・日本の没落とヒューマニズム(人間中心時代)の終焉の未来を爽やかに、力強く生きるために①
九州の知人の記事
https://ameblo.jp/kokilives/entry-12589172976.html
・なぜ人々はコロナ危機の中でもパチンコ店に殺到するのか DIAMOND online
【コロナウイルスの概要関連】
◆出典:厚生労働省
◆日本内科学会誌:短めにまとめてくれています
https://www.naika.or.jp/jsim_wp/wp-content/uploads/2020/02/Novel-coronavirus-disease-COVID-19.pdf
◆Wikipedia が案外タイムリーにすごいスピードで更新されている
・情報の信頼性については自身で原典を確認してください
・Wikipediaの中にもなん個かページが出てます
ー2019新型コロナウイルス
https://ja.wikipedia.org/wiki/2019%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9
◆新型コロナウイルス感染をのりこえるための説明書 諏訪中央病院;玉井道裕医師
自分の意見も日記的に発信しているので、ナラティブ情報としても割と貴重かもしれない。
◆J-IDEO号外(忽那先生):
とりあえずコロナについて必要な知識は全部載ってます
https://note.com/chugaiigaku/n/n8583a93b5a80https://note.com/chugaiigaku/n/n8583a93b5a80
◆浙江医大のハンドブック日本語版:
病院としてどう対応すべきかなど壮大なまとめです
https://www.alibabacloud.com/zh/universal-service/pdf_reader?cdnorigin=pdf-intl&pdf=Read%20Online-Handbook%20of%20COVID-19%20Prevention%20and%20Treatment-Japanese.pdf
◆マスク文献集2020 (湯浅秀道先生)
https://docs.google.com/document/d/1SH8pii16imRC1czG1G7g4PgFoDD4aeK9BVNu9hoCBO0/edit#heading=h.2hue1ldzj2ne
◆アメリカ疾病予防管理センター(CDC):英語だけどいいサイト。
cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/index.html
◆暴露してしまったかもしれないとき:
不安なときはこれをみましょう。
・CDCガイドラインの翻訳(志賀隆先生)
① http://takashi-shiga-md.hatenablog.com/entry/2020/02/23/213024
② http://takashi-shiga-md.hatenablog.com/entry/2020/02/24/091512
③ http://takashi-shiga-md.hatenablog.com/entry/2020/02/24/092250
【全ゲノム配列について】出典:NCBI, 国立感染症研究所
※ゲノム情報も、毎日のように最新版が更新されています。
こちらは2月1日時点での最新ゲノム配列情報を掲示しました。
○ 新型コロナウイルス感染症は、我が国において、現在、ヒトからヒトへの感染が認められましたが、現時点では広く流行が認められている状況ではありません。国民の皆様におかれては、過剰に心配することなく季節性インフルエンザと同様に咳エチケットや手洗いなどの基本的な感染症対策に努めていただくようお願いいたします。
○ 武漢市から帰国・入国される方あるいはこれらの方と接触された方におかれましては、咳や発熱等の症状がある場合には、マスクを着用するなどし、事前に医療機関へ連絡したうえで、受診していただきますよう、御協力をお願いします。また、医療機関の受診にあっては、武漢市の滞在歴があることまたは武漢市に滞在歴がある方と接触したことを事前に申し出てください。 |
最新論文・サイエンスに関連して
こちらは完全に筆者の趣味レベル。
それにしてもSARSやエボラの時もそうだったけど、【この程度?!】って思うようなデータ量や実験で世界最高峰クラスの論文にこうも簡単に載ってしまう。これらの報告にはほぼ新規性なんてあったもんじゃなくて、【一定のお作法】を踏めばすぐにできてしまう、要はクリエイティビティの観点からはレベルの高くないものばかり。
でも、社会から必要とされている情報だからこそ、どんどん世に出ていくんだろうなぁと。こちとら博士論文書くために毎日必死にアイデア出し、実験のための手を動かしって感じなので、なんだか複雑な気分になったりもします。
とにかくまあ、なんか論文が出たら更新していく気がします。
一個だけ、Yahoo NewsがLancetに報告されたものをいい感じにまとめてくれていたのがあるので、それだけ紹介しておきます。(タイトルは最新論文って書いてあるけど、論文自体は1月のもの。)
→
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200125-00160270/?fbclid=IwAR118FqnOuyZ3b8pCYPMP_YnnnjhJCqY-_qlbCduPryS4FdZ7L5YdQwwdZ0
◆New England Journal of Medicine 20.01.29.
初期にめちゃ大事なデータとして報告してくれてたなぁと思ったのがこちらの論文.
Early Transmission Dynamics in Wuhan, China, of Novel Coronavirus–Infected Pneumonia
List of authors. Qun Li, M.Med., Xuhua Guan, Ph.D., Peng Wu, Ph.D., Xiaoye Wang, M.P.H., Lei Zhou, M.Med., Yeqing Tong, Ph.D., Ruiqi Ren, M.Med., Kathy S.M. Leung, Ph.D., Eric H.Y. Lau, Ph.D., Jessica Y. Wong, Ph.D., Xuesen Xing, Ph.D., Nijuan Xiang, M.Med., et al.https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2001316
◆Lancet 20.01.24.
こちらも初期の重要な論文。41人の患者さんを取ってきて症状とか疫学情報を提供してくれている。
A familial cluster of pneumonia associated with the 2019 novel coronavirus indicating person-to-person transmission: a study of a family clusterJasper Fuk-Woo Chan, Shuofeng Yuan, Kin-Hang Kok, Kelvin Kai-Wang To, Hin Chu, Jin Yang, et al.
◆Lancet 20.01.29.
1月26日時点の情報がmanuscriptに書いてあるってことは、これsubmitされてからたったの三日でacceptされたってことだろうか。。。だとしたら信じられない早さだ。
NGS(次世代シークエンサー)を使った遺伝子解析を割と初期に行なっている論文で、系統樹からコウモリ起因説を提唱してたり、ACE2受容体の関与を示唆していたりする。
◆Lancet: 2020.02.11.
ロンドンにいる日本人からのコレスポンデンス。
Cai, G. Tobacco-Use Disparity in Gene Expression of ACE2, the Receptor of 2019-nCov. Preprints 2020, 2020020051 (doi: 10.20944/preprints202002.0051.v1).
◆プレプリント②(20年3月3日)
湖北省での年齢別死亡率をまとめてくれていてわかりやすい。
やっぱり死んでいるのはほとんどが高齢者だとわかる。
Adjusted age-specific case fatality ratio during the COVID-19 epidemic in Hubei, China, January and February 2020
Julien Riou, Anthony Hauser, Michel J Counotte, Christian L Althaus
medRxiv 2020.03.04.20031104; doi: https://doi.org/10.1101/2020.03.04.20031104
※昨今、プレプリントをメディアががやがや取り上げるせいで、その一般発信については慎重に捉えるべきだという意見があると思います。筆者もその立場です。プレプリントはあくまで学術的にきちんと証明されているわけではないので、そのデータの信ぴょう性などは読者側がしっかり判断すべきです。
海外の見解とか資料とか (ほぼ英語です)
※こちらはメーリスにとある先生が流してくれた情報を大いに参考しています。
ほんの一部の見解を紹介しているだけです。。
他にも山ほど記事が出ています。
◆米国NIH
The authors conclude that, “the emergence of yet another outbreak of human disease caused by a pathogen from a viral family formerly thought to be relatively benign underscores the perpetual challenge of emerging infectious diseases and the importance of sustained preparedness.”
あまり危ないと思っていなかったウィルスがアウトブレイクを引き起こしつつあることは確かで、新興感染症に対する注意・対応を継続することの大切さを強調している、というような結論。またSARS,MERSの経験から、ワクチン製造過程が強化され、SARSの時必要とされた20か月という期間が3か月ほどに短縮される見込みも触れられている。
Advances in technology since the SARS outbreak have greatly compressed the vaccine development timeline, the authors write. They indicate that a candidate vaccine for 2019-nCoV could be ready for early-stage human testing in as little as three months as compared to 20 months for early-stage development of an investigational SARS vaccine.
新興感染症対策の最前線の専門家の大きな仕事の一つがワクチン開発で、それに対してはするべきことがきちんと進んでいる状況と考えて良さそう。
◆WHO
WHOが一般市民向けに推奨する感染対策。
上に専門家がやるべきこととしてワクチン開発なんかを述べていますが、一般市民の我々ができることは、WHOや厚労省が言っている通り。
つまり、「手洗い・うがい、発生が報告された場所・人込みを避ける、発熱があったら医療機関へ(※行き過ぎると医療機関がパンクする, 2009豚インフルの時に経験済)」くらいをちゃんとしようということだ。
WHO’s standard recommendations for the general public to reduce exposure to and transmission of a range of illnesses are as follows, which include hand and respiratory hygiene, and safe food practices:
* Frequently clean hands by using alcohol-based hand rub or soap and water;* When coughing and sneezing cover mouth and nose with flexed elbow or tissue – throw tissue away immediately and wash hands;* Avoid close contact with anyone who has fever and cough;* If you have fever, cough and difficulty breathing seek medical care early and share previous travel history with your health care provider;* When visiting live markets in areas currently experiencing cases of novel coronavirus, avoid direct unprotected contact with live animals and surfaces in contact with animals;* The consumption of raw or undercooked animal products should be avoided. Raw meat, milk or animal organs should be handled with care, to avoid cross-contamination with uncooked foods, as per good food safety practices.
◆そのほかはウェブサイトURLの紹介に留めておきます
・Imperial College London (20.01.24.)
What is the new coronavirus (2019-nCoV) and what do we know about the outbreak so far?
・Johns Hopkins
SCHOOL OF PUBLIC HEALTH DEGITAL LIBRARY
https://www.jhsph.edu/covid-19/index.html
・Public information by Ministry of Health, Labor and Welfare(厚労省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/newpage_00032.html
・COVID-19 Fact Sheets (support 35 languages) by Harvard Health Publishing
ハーバードのやつ、日本語版もあるよ。
https://covid19healthliteracyproject.com/?fbclid=IwAR0S59JxNxMqx4wKk-EkrXdNdAkCulh_RMu4jaXa4Awlj6At5sOoq9fDxjM#
・lecture by Mohammed Bin Rashid University of Medicine and Health Sciences
医学部のレクチャ。英語の勉強にもなるのでぜひって知り合いが言ってた。
https://learn.mbru.ac.ae/courses/covid19?fbclid=IwAR3O4WT82CDIx4jHg2RJpzBlOhcVSpenzSNJ_cjNziRiGpv2IY0dbYgGtT8
その他問題・懸念点
◆「風評被害」と「差別」
すでに報告されているよう。
きっと近々さらに表面だって問題になるのが、
感染した方々と感染ポテンシャルの高い人に対する
「風評被害」と「差別」だろう。
知り合いの医師や他の権威の方も口をそろえて言っている。
過去、新型インフルエンザの時に関西大倉高校が、ターゲットにされていた。
http://www.asahi.com/special/09015/OSK200905210063.html
まとめ
現時点では「通常のインフルエンザ対策」以上の特筆した行動・意思決定を行う必要は大きくないと考えている。筆者もそうだし、感染症専門委ではないが知人の医師らもそのように言っている。
ただし、注意深く情報をアップデートしていく必要があるだろう。
これから、ほぼ間違いなく我が国への感染拡大も予想される。
それとともに、通常のインフルエンザ自体も影をひそめるように
医療機関では猛威を振るっているそうなので、
やはりインフルエンザ対策をしっかりしておくことが大事そうだ。
※ これまでに示してきた情報や意見は著者の個人の独断で引っ張ってきたもの(知人や団体からの紹介含む)・筆者個人のものであって、所属機関とは一切の関係がありません。また、間違えている情報などがございましたら、筆者の勉強にもなりますので、ぜひご教示いただけますと為になります。よろしくお願いします。
関連書籍
『
呼吸器内科医が解説! 新型コロナウイルス感染症 — COVID-19 —』
『
感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)』
『
「感染症パニック」を防げ!~リスク・コミュニケーション入門~ (光文社新書)』
『
新型コロナウイルス肺炎、インフルから身を守れ! (安心4月号増刊)』