人が、「ゲーム」だと思う瞬間
とある論文を読んでて、ふときになることが出て来た。
「人が、ゲームをゲームだと思う瞬間って、どんな時だろう」
「ゲームをゲームたらしめている要素って何だろう」
この疑問に対する回答は、
人間が物事を「面白い」と思う時に共通する要素なんだなぁって思う。
そこで、人が「面白い」と思う時の法則を、「ゲーム」や
「遊び」といった視点から考えて見たいと思う。
極めて素朴だけれども、人の心理とかに迫れると思ったので、ちょっとだけ考察を。
ゲームでタンパク質の構造を予測する
自分が読んでて、「あー」と思った論文がこちら、
Predicting protein structures with a multiplayer online game
→ https://www.nature.com/articles/nature09304
"タンパク質の構造をオンラインゲームで予測する"という論文
Chem-Stationで内容を語ってくれているので理解されたい方はこちらも参照されたい。
→https://www.chem-station.com/blog/2011/11/-foldit.html
簡単に解説だけしておくと、このゲームの構造は、
タンパク質の構造最適化という計算科学(計算化学)領域の課題を、
クラウドソーシング的な手法でネットにいるゲーマーたちに解いてもらおうというもの。
Folditのプレイ画面. |
著者も少しだけプレーして見た。
直感的なインターフェースで操作ができて、英語さえ問題なければ
化学がわからなくてもチュートリアルをちゃんと辿れば
大方タンパク質に働く相互作用(水素結合や疎水性相互作用)について
理解できるようになっていたように思う。
ゲームがゲームでありうる要素の話
ここで、著者がプレーしていて気になったのは、(論文の本質とは逸れるが、)
「ゲームらしさとは何か」という問いである。
どこまで楽しかったりするとゲームと言えて、
どこまでだつまらないと人がゲームでないと感じてしまうかという
感覚的な問いである。
ゲームをプレーしていても、人(ユーザー・プレイヤー)は退屈だと思うと
すぐに投げ出して、眠るか別の遊びに入ってしまう。
一体どういう要素が人をそのゲームに対して「のめりこませる」ようにするのだろうか。
遊びの4大要素
まず、一般的に言われているような話を持ってくる。
遊びの4大要素なるものがフランスのRoger Caillois(ロジェ・カイヨワ)氏より提唱されているが、こちらがとても参考になると思うので引用する。
詳細はロジェ・カイヨワ氏の著書『遊びと人間 (講談社学術文庫)』を参考されたい。
氏によると、遊びの要素として、以下の4つがあげられるという。
1. アゴン (競争) …優劣をつける サッカー、野球など
2. アレア (運) …思い通りにできない ギャンブル、パチンコなど
3. ミミクリ (模擬) …真似事・なりきり ごっこ遊び、演劇など
4. イリンクス(めまい)…トリップ・マゾ サーカスなど
さらにこれらの4要素について、
パイディア(自由)・ルドゥス(窮屈)という2局面があると取り上げているが
これについては割愛させていただくので、参考URLか図書をみていただきたい。
先ほどのタンパク質の構造推定ゲームは、スコア化しているという点で、
競争要素(アゴン)を持っていると考えることができるのではないかと思う。
競争要素と運要素、模倣要素については、著者は比較的すんと腑に落ちている。
確かにゲームとかってこういう要素を持っているなと。
4. インクリス(めまい)っていう要素については、わかるようで、わからないようで。。
そのほか、ゲームをゲームたらしめている要素の考察
著者は上のタンパク質構造推定ゲームFolditを眺めて、
競争要素についてパッと思い浮かんだ他に、次の2点についても、
ゲーム足らしめる要素があるのではないかと考える。
- Contribution (コントリビューション)
→ 自分がそのゲーム、ゲーム内のコミュニティなどに対して、
何らかの形で寄与できているのだという感覚。
自己が容認されたような満足感、
自分の居場所はここだ、というような欲求を満たしてくれるような感覚、
これがコントリビューション要素に含まれている心理だと思う。
例えばわかりやすいのが、Wikipediaとか食べログとか。
Wikipedia に新たな言葉を作ったりとか、食べログに美味しいレストランの
レビューを書き込んだりするのは、自分が辞書の世界や、
グルメの世界で存在感を残すためにやっていたり、
他の人のためになるのであれば,といった正義感のためにやっているのだと思う。
ちなみにFolditを例にとると、実はこれはサイエンスの世界に寄与する
といったコントリビューション要素が含まれている。
というのも、Folditの関連した論文の著者としてPlayerが著者として
載せられるのだ (参考文献参照)。これは立派な科学への貢献であり、
科学の世界へ貢献したいと思うような人が少なからず
プレイヤーになっていたのではないかと筆者は考える。 - Reward (報酬)
→ こちらはもっとシンプルでわかりやすいのではないかと思う。
ゲームで勝つことでコインだとか経験値がもらえたり、
いいアイテムを勝ち取るなんていう要素である。
他にももっと極端な例でいうと、お金がもらえるとかもある。
競馬とかパチンコだ。
ここで、ちょっと面白いなという視点は、
【お金を払ってでもゲームをする人さえいる】という点であると思う。
よくいう課金勢とかはまさにそれだし、
普通に任天堂のWiiやSwitchを購入して遊ぶ人もお金を払って
遊んでいる。
ここにゲームの不思議なところとかがあるんだろうなって思う。
もっというと、ゲームと仕事の違いとかについても言いたいのだけれど、
それはまた別の機会にでも。
ゲームらしさの要素まとめ
以上、何を持ってゲーム・遊びを定義するかについて述べてきたが、
ここで、ゲームらしさの要素を著者なりにまとめておきたい。
(5つの頭文字をとってCLMCRの法則とか言いたいけど、覚えにくいのでなし。)
(5つの頭文字をとってCLMCRの法則とか言いたいけど、覚えにくいのでなし。)
- Competition: 競争・スコア要素
- Luck: 運要素
- Mimic: なりきり・模倣要素
- Contribution: 貢献要素
- Rewards: 報酬要素
他にもゲーム要素ってあると思うんだよなぁ。
ゲーミフィケーションの記事でも読んだら絶対ある。
他に思い浮かぶ人がいたら是非連絡して欲しいです。
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参考文献
参考URL
<遊びの4大要素について>
次の2つのURLを参考にさせていただきました。
http://www.kunimiya.info/blog/2014/09/20/review-les-jeux-et-les-hommes/
http://45314.diarynote.jp/200403041733380000/
=====================================Predicting protein structures with a multiplayer online game
- Nature 466, 756–760 (05 August 2010)
- doi:10.1038/nature09304
参考URL
<遊びの4大要素について>
次の2つのURLを参考にさせていただきました。
http://www.kunimiya.info/blog/2014/09/20/review-les-jeux-et-les-hommes/
http://45314.diarynote.jp/200403041733380000/
関連書籍
・『タンパク質計算科学 ―基礎と創薬への応用― [CD-ROM付]』
・『遊びと人間 (講談社学術文庫)』